ある企業から解雇された労働者が訪ねてきました。
相談内容は、解雇に至る経過と、解雇通告と前後した経営側とのやりとりを時系列でまとめようとしているが、どのようにまとめたら良いかというものでした。

相談が終わり、「ところで、生活はどうしているのですか? 雇用保険の手続きはどうなっているのですか?」
と尋ねると、「会社から離職票も届かないし、自分から離職票の発行を請求すると、解雇そのものを認めることになると思ってそのままにしている」との答えでした。
この答えのなかには、二つの問題点があります。

事業主は10日以内に離職に関する手続きを行うこと

相談者が会社から即時解雇されたのは3月初旬だということですから、既に2か月が経過しています。
それにも関わらず、会社は離職票を発行せず、放ったらかしにしているのです。
これが第一の問題です。

雇用保険法施行規則の第七条には、事業主がいつまでに職安に手続きしなければならないのかを定めています。
これによれば、離職の日の翌日から数えて10日以内に、離職票を添えて資格喪失の手続きをしなければなりません。
もちろん、離職の理由が労働者の自己都合であっても、解雇によるものであっても、10日以内に手続きを行うことが求められています。

第7条 事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内、雇用保険被保険者資格喪失届(様式第四号。以下「資格喪失届」という。)に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳その他の当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの事実及びその事実のあつた年月日を証明することができる書類を添えてその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。この場合において、当該適用事業に係る被保険者でなくなつたことの原因が離職であるときは、当該資格喪失届に、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める書類を添えなければならない。
一  次号に該当する者以外の者 雇用保険被保険者離職証明書(様式第五号。以下「離職証明書」という。)及び賃金台帳その他の離職の日前の賃金の額を証明することができる書類

従業員としての地位を争う場合は、仮給付制度が活用できます

解雇は無効だという気持ちが強ければ強いほど、「解雇を認めたと思われるようなことはしたくない」という気持ちは良く理解できます。
・離職票の発行を認めない、あるいは離職票が発行されてもそのまま放置しておく。
・健康保険証や会社からの貸与物(ユニフォームや社員証など)を返さない、等々
しかし、これらの行為はそれほど意味のあることではなく、場合によってはマイナスの効果しかもたらしません。
資格喪失届けが出されている健康保険証を使って、病院で受診などしようものなら、不正行為とされてしまいます。
離職票に関して言えば、解雇されて収入がないなかでのたたかいに、経済的な困難を増大させてしまいます。

雇用保険の仮給付については、下記の記事に詳しく記載してありますので、ご参照ください。 

雇用保険の仮給付とは