長時間労働アベノミクスで物価を2%上げればデフレから抜け出し、経済は好転する。
大企業が儲ければ、労働者や下請企業にも金が周り、国民の生活が良くなる。
配偶者控除の見直しは、女性の就労を後押しし女性の力を発揮してもらうため。
集団的自衛権の行使容認は、国民の安全を守るため。
新しい労働時間法制は、労働時間に縛られることなく成果で処遇するのは、残業を減らすため。等々

とうに底はしれているのだが、これらは「これが国民のためなんだよ」というものであるが、国民のためにはならない代物ばかりである。
ためにならないだけならまだしも、害をなすものだ。

新しい労働時間法制については、今、厚生労働省の労働政策審議会で議論されている「残業代ゼロ」制度である。
これまでの報道によれば、残業代ゼロ制度の適用となる労働者は、年収1000万円以上、仕事の範囲が明確で高い職業能力を持つ者などが導入の条件として、検討されるようである。

この制度を推奨する人たちは、次のように主張する。

長時間労働を抑止する
長時間労働から労働者の生命と健康を守る
労働者がこの制度に移行する時は従来の賃金を確保するから賃下げはない。

これらの主張を額面通りにとったとして、果たして新制度が必要なのか?
まったく必要ない。

これまで残業時間の上限規制に対する要求に背を向けてきたのは政府である。
過労死・過労自殺を生み出し、放置してきた責任もある。
長時間労働をなくすためには、残業時間の上限をキッチリ規制すればよい。
政策的に低賃金の非正規雇用を増やしてきたのは政府である。正社員であっても賃金は抑制されてきた。残業しなければ生活がなりたたないように仕向けてきたのは、ほかならぬ政府なのである。
非正規雇用を減らし、正規雇用で将来の安定と希望を与え、残業しなくても人並みの生活が営める賃金を保障する。
年次有給休暇の取得率が約50%という不名誉な状況を抜本的に改め、年次有給休暇の100%取得を実現する。
女性労働者が妊娠・出産したら退職に追い込むなどという人権侵害を止めさせ、働きながら安心して出産・育児ができる環境を整える。

要するに、現行の労働時間法制の上に、労働者の権利をしっかり保障すれば、長時間労働を抑止し、労働者の命と健康を守り、豊かな家庭生活を営むことができるのである。
これは長期的にみても、我が国の大問題である少子化を克服することにもなる。

ことさら声高に新しい労働法制など持ち出す必要な一つもない。
それを持ち出してきた狙いは、大企業とその経営者、株主の利益にために、これらの面々にしゃぶり尽くされる労働者を生み出そうとするもの以外にないであろる。