12月7日、沖縄産業支援センターで、厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催された。

シンポジウムのめざすところは、過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ」と歩を進めることにあるらしい。

その内容は、①沖縄労働局から現状報告、②「メンタルヘルスと働き方改革」(山本勲慶應義塾大学商学部教授)、③「過労死等を考える家族の会より体験談発表」(中原のり子東京過労死を考える家族の会代表)となっている。

沖縄労働局の現状報告では、週実労働時間60時間以上の雇用者の割合が全国7.7%に対して沖縄県は5.8%となっている。

全国一の長時間労働県であった沖縄からは考えにくい数値であるが、この間の非正規率全国一の雇用実態を校了すれば、そのような数値となるのも理解されなくもない。

但し、監督指導結果では労働基準法例違反の事業所が79%(全国66%)、違法な時間外労働54%(全国43%)、賃金不払残業14%(全国6%)とあるから、加味して考えることが必要だろう。

山本勲教授のお話は、計量経済学の立場から統計を解析し、その結果どのような影響が考えられるかというもので、かなり面白い内容であった。

労働時間が長い企業は、メンタルヘルス不調による休職者比率も高くなる傾向にあり、休職者比率が上昇した企業は、そうでない企業に比べて数年後の売上高利益率が低くなる傾向にあることが示された。

具体的には、メンタルヘルス不調による休職者比率が0.1%上昇すると、2年後の利益率は0.16%低下するとのことである。

最近のメンタルヘルス不調の原因として、長時間労働に限らず、いじめ、パワハラ、セクハラによるものが増加していることから、その辺りの話が聞ければなお良かったと思うが、“講演を聞いて終わり”の運営には物足りなさを感じるところであった。

中原のり子代表は、医師であった夫の過労自殺から過労死認定のたたかい、損害賠償を求めるたたかいを経て、働く人が過労死することのない社会をめざして活動するに至る過程を報告した。

お話の結びに、小学校に上がる前に、父親を過労自殺で亡くしたまー君が中学三年の時に書いた作文を読み上げた。 「命こそ宝」と題がつけられたこの作文は、涙なしには聞けないものだった。

作文の中で紹介されている、小学校1年生の時の詩を紹介する。


僕の夢

大きくなったら、ぼくは博士になりたい。

そしてドラえもんに出てくるようなタイムマシーンを作る。

ぼくはタイムマシーンにのって

お父さんのしんでしまう前の日にいく

そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや


そのうえで、中原代表は「政府がすすめようとしている働き方改革について、私は反対だ。私の夫は医師であり、高度プロフェッショナルにあたる職業だった。そういう職業を労働時間規制から外したり、過労死するような長時間労働を合法化しようとしている」と明確に述べていた。

このようなお話は、我々労働者や地方の企業経営者が聞くことも大事だが、それよりもまず厚労省のキャリア官僚、法律をつくる国会議員、経団連や経済同友会、日商の役員が聞くべきだと思う。

人の命に関わる大事なテーマをかかげながら、労働局長が顔も出さないというのでは本気度が疑われる。

別の用事があったかも知れないが、過労死シンポは最優先すべき課題ではないだろうか。