15歳へのバトン

手元に「15歳へのバトンー僕たちが”沖縄”を受け継ぐ前に聞いておきたいこと」という本があります。

2013年6月に出版されたこの本は、「沖縄の子どもたちが「ケータイと音楽プレーヤー」を「カメラとICレコーダー」に持ち替え、人生の先輩たちから自分たちの生きる時代のヒントを探す」ために、人生の先輩たちにインタビューした内容をまとめたものです。

人生の先輩として、池上彰さん(ジャーナリスト・東京工業大学リベラルアーツセンター教授)、大田昌秀さん(沖縄国際平和研究所理事長・元沖縄県知事)、新里英之さん(HYリーダー・ボーカル・ギター)、鈴木章さん(北海道大学名誉教授・ノーベル賞受賞者)、原辰徳さん(読売ジャイアンツ監督)、茂木健一郎(脳科学者)など21人の方々が登場します。

その21人のうち、仲井眞弘多前知事(当時は現職の第6代沖縄県知事)が登場します。

幾つか質問項目があり、「15歳のうちなーんちゅへ、メッセージをお願いします。」が、最後の質問となっています。

仲井眞前知事は、この質問に対して「沖縄にはいいところが無限なあります。県民の明るさ、リベラル性というものは大変素晴らしい。でも『井の中の蛙』になってはダメです。広い世界を見て、そして広い視野で沖縄を見つめてほしいですね。」と答えています。

それぞれの人生の先輩たちが、色紙に(座右の銘と理解して良いと思われる)言葉を記しています。

仲井眞全知事の色紙は「独立自尊」です。

仲井眞知事が行った最大の仕事は、この本が出版された3か月後の辺野古公有水面埋め立て申請の承認ですが、この承認が「広い視野で沖縄を見つめた」結果なのか、独立自尊の立場でなしたものなのか、理解し難いことです。

稲嶺恵一元知事は、軍民共用、15年使用期限など条件を付けて移設を容認する立場でしたが、現行のV字型滑走路案には反対していました。

その時、沖縄経済団体会議(経営協、県商工会議所連合会、経済同友会など12の主要な経済団体で構成)の議長を務めていた仲井眞弘多氏は、稲嶺知事に対して「政府と対立するのはいかがなものか」と苦言を呈しています。

独立自尊とは「他人に頼らず、自分の尊さを守ること。」(大辞林)ですから、「安部首相と菅官房長官が普天間の5年以内の運用停止を約束した」と安倍政権を頼り、普天間の「県外移設を強く求める」との公約を投げ捨てて埋め立てを承認したことについて、仲井眞知事に言ったビューを行った15歳の若者たち、この本を読んだ若本たちはどのような気持ちで受け止めたのだろうか。

思いを馳せずにはいられません。