外形標準課税は税制の応能負担原則に反する税制

一時期「福祉が人を殺す」と言われた。その実態は今も続いているが、今度は「税制が企業を殺す」時代になるかも知れない。外形標準課税の対象拡大がそれである。

安倍政権は、実効法人税率の引き下げを目論んでいるが、財界の要求どおり税率を10%引き下げると年間5兆円の財源が必要となる。
その財源を確保するために「一部の黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直す」とし、赤字の法人からも広く税金を徴収することを狙っている。

そのために政府税制調査会が打ち出したのが、外形標準課税の対象拡大である。
現在は資本金1億円以上の企業が対象となっているこの税制を、1億円以下の企業にも広げようというのだ。
外形標準化税とは、資本金、給料、支払利息、賃借料に課税するものであるから、利益があろうがなかろうが税金だけはくっついてくる。
赤字でも払わなければならない消費税に加えて、赤字でも払わなければならない外形標準課税が適用されると、赤字にあえぐ中小企業の命取りになりかねない。

そもそも税金は企業であれ、個人であれ「支払い能力に応じて負担する(応能負担)」が原則ですが、消費税同様にこの外形標準課税もその原則に反する税制である。

圧倒的多数の赤字企業からの徴税強化で倒産・廃業の増加が想定される

税理士の菅隆徳さんの試算によれば、対象企業は約3万社から248万社になるとされています(7月28日付「全国商工新聞」)。
少し古い数字で恐縮だが、沖縄国税事務所発表の2011年度における沖縄の申告法人件数2万241件のうち黒字申告企業は34・5%である。同年度における全国の黒字企業の割合は25・9%である。

赤字であっても無理やり税金をむしりとっていく税制になれば、税金を少なくするためには資本金、給料、支払利息、賃借料などを減らすことを、事業主は考えるかも知れない。これらのうち最も手を付けやすのは労働者の給料を減らすことである。
それでも絶えられなければ、倒産・廃業の道しか残らない。

片や、日本一の大企業トヨタは2008年度から12年度までの5年間、法人税を1円も納めていないことが明らかになっている。この間の株主配当は1兆円を超えるとされる。

外形標準課税の適用対象拡大は、企業だけでなく労働者にとっても大問題なのである。
安倍政権の大企業優遇、中小企業潰しとも言える悪政に、労働者も立ち向かうことが求められている。
そのためにも、労働者の社会的力を大きくしていくが重要である。
労働者の力は一人ひとりでは弱いが、労働組合に結集し集団としての力を発揮することにより、大きな力を発揮することができる。

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