本件調書に定めるもののほか、一切の債権債務が存在しないことを双方確認する。

裁判所等で和解が成立した時、和解調書に書き込まれるのが上記のような文言である。
これを清算条項という。
裁判所等の第三者機関をとおさずに、自主交渉で問題が解決した時の合意書にも盛り込まれることが多い。
その趣旨は「この内容で和解したのだから、後からいろいろ持ち出して請求すことはできませんよ」というものだ。
この清算条項を入れることによって、紛争当事者間での最終的な決着をつけることになる。

一部だけの請求解決で清算条項入れた合意書

今日相談にきた方の問題は、それこそ多岐にわたっていた。
詳しく書くわけにはいかないが、超長時間労働と労災、解雇、未払い残業代、会社都合の休みの保障、会社からの損害賠償、社会保険料負担分の一括請求、等々・・・
ところが、損害賠償と社会保険料の負担分だけを対象として合意し、清算条項入の合意書を締結してしまっているのである。
労災保険の申請は労基署にやるものだから何とかするとして、それが認められれば休業中の解雇も違法とする要求はできるだろう。少なくともその立場で道を切り開くしかない。
問題は、未払い残業代の請求がどうなるかだ。
会社は、「合意書を締結した時点で清算条項により請求権を放棄している」と主張してくるだろうことは目に見えている。
過去においても、公的機関におけるあっせんでも同様なことがあった。

最初に労働組合に相談するのが安心

いろいろ問題を抱えている時には、安易に清算条項入の合意書にハンコを押すのは止めることである。
もちろん、主要な部分で合意できたのだから、その他の問題では譲っても良いと考えられる場合は、ハンコを押しても構わないのであるが、そうでなければやめることだ。
会社が清算条項を入れることにこだわる場合には、合意そのものを破棄するくらいの覚悟で臨むべきである。

さらに言えば、清算条項がどういう意味をもっているのか分からないまま会社との交渉に臨むのを避け、まずは労働者の権利を守るために力を尽くしている地域の労働組合に相談するのが無難である。
仮に自主交渉で決着がつかない場合でも、労働組合には労働問題を専門とする弁護士が協力してくれるので心強い。

問題を抱えている方は、不確かな知識で会社と交渉し妥結する前に、沖縄県労連までお気軽にご一報ください。
連絡先は通話料無料のフリーダイヤル 0120-378-060 まで。
沖縄県以外から電話しても、お近くの労働相談所につながります。