労働相談を受けると、1回の面談で全ての事実を聞き取ることは無理な時が多い。

残業代請求などの事案はそれなりの資料があればそれ程でもないが、処分絡みとなると複雑になるケースも多い。

問題を解決したいという立場で相談する方には、いずれ会社に対して交渉を申し入れなければならない。

その際に重要になるのは、当事者の受け止め方や主張よりも、事実関係がどのようなものなのかという点にある。

そこで、相談される方には、時系列で事案の概要を書き出してもらうようにお願いしている。

できるだけ事実関係に絞って書いてもらうこと、自分の評価や受け止め方を書くのは結構だが、事実かどうか分からないような書き方はしないで欲しい旨と念を押している。

ところが、これが案外と難しいようである。

例えば、「パワハラしたと訴えた同僚がいて、会社から事情聴取を受けてパワハラだとされた。自分はパワハラした覚えはないのに不当だ」と書かれてきたりする。

どのような言動をしたからパワハラだと言われたのか、そこがさっぱりわからない。

また、「メールで○○さんに情報を漏えいしたと疑われているが、身に覚えがない」と書かれてきたりする。

メールを○○さんに送信したこと事態が身の覚えがないのか、メールは出したがメール内容が情報漏洩に当たらないと思っているのかが分からない。

交渉をしていく以上は、相談者の主張だけをよりどころにやる訳にもいかないし、かと言って、すべて聞き取りで事実を確かめていては時間がいくらあっても足りないし、・・・・

交渉に行き着くまで、結構な労力が要る作業ではある。