不幸にして会社が倒産。
まだもらうべき賃金が残っている!!
このようなことは経験したくありませんが、場合によってはあなたもそんな目に遭うかも知れません。
また、あなたの周りの家族や友人が、遭遇するかも知れません。

そのような場合でも、あきらめないことが肝心です。
条件によっては、国が事業主に代わって、賃金を立て替えてくれる制度があるのです。

その根拠となる法律が、「賃金の支払の確保等に関する法律」です。

 
「賃金の支払の確保等に関する法律」(略して賃確法)に基づく立替払い制度 の概要は、下記のようになっています。

 ■賃金の支払の確保等に関する法律の目的
この法律の目的は、
(1)貯蓄金の保全措置
(2)企業の事業活動に著しい支障が生じた場合の賃金の支払いの確保
(3)退職金の確保です。

 ■未払い賃金の立替払制度  
労災保険法の適用事業に該当する企業が、破産の宣告を受けた場合などで、未払い賃金がある時は、労働者の請求にもとづき、事業主に代わって、政府が立替払いを行います。

 ■どんな場合に利用できるのでしょうか?
立替払いが利用できるのは、企業が倒産し、賃金が支払われないまま退職した労働者が、利用できます。

 ■「倒産」とは、どのような事態を言うのでしょうか?
裁判所が関与した破産などはもちろん、裁判所が関与しない「事実上の倒産」も含まれます。
この制度の事務を担当している労働福祉事業団は、「倒産」について下記のように取り扱っています。
(1)破産宣告、特別清算の開始、会社整理の開始、民事再生手続きの開始、会社更正手続きの開始について、裁判所の宣告、決定、命令があった場合。
(2)破産等の手続きはとられていないが、事実上、事業活動が停止して、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払い能力がないことについて、労働基準監督署長の認定があった場合。

 ■誰でも立替払いを受けられるのでしょうか?
「未払い賃金がある」というだけでは、立替払を受けることはできません。
立替場払いを受けることができる要件は次のとおりです。
(1)労災保険の適用事業で、1年以上にわたっ事業活動を行ってきた企業に、労働者として雇用されてきて、企業の倒産に伴い、下記の期間に退職し、未払い賃金が2万円以上残っている人が対象となります。
(2)裁判所にたいする破産等の申立日、または労働基準監督署長にたいする倒産の事実認定申請日の6ヵ月前の日から2年の間に、退職した労働者が対象となります。

 ■立替払いの対象となる賃金は、どのようなものでしょうか?
対象となる賃金も、一定の制約が設けられています。
(1)退職日の6ヵ月前の日からの「定期賃金」と「退職手当」で、労働福祉事業団への立替払の申請の日の前日までに、支払い期日がきている賃金が対象となります。
(2)「定期賃金」とは、毎月支払われる賃金です。
「退職手当」も労働協約や就業規則で支払いが定められていることが条件になっています。
賞与その他臨時に支払われる賃金や解雇予告手当などは対象外です。

 ■上記の未払い賃金であれば、全額立替してもらえるのでしょうか?
立替払を受けることができる金額は、未払い賃金総額の80%で、そのうえ、退職時の年齢等により下記のような上限が設定されています。  ●  ●45歳以上の人
   未払い賃金限度額 370万円
   立替払いの上限額 296万円
 ●30歳以上45歳未満の人
   未払い賃金限度額 220万円
   立替払いの上限額 176万円
 ●30歳未満の人
   未払い賃金限度額 110万円
   立替払いの上限額  88万円

 ■立替払の請求手続きはどこで行うのでしょうか?
破産などの場合は、労働福祉事業団に対して行います。
事実上の倒産の場合は労働基準監督署長の「倒産の認定」を経ることになりますので、労働基準監督署に行います。

 ■立替払いを受ける上で、注意する点は?
破産や民事再生など、裁判所が関与する倒産については、管財人などが選任されますし、帳簿等も保存されている場合が多いのですが、社長が夜逃げしたというケースなど、労働基準監督署長の認定を受けなければならない場合、賃金台帳、就業規則(退職金規定)などの資料が散逸し、認定に困難を極める場合があります。

したがって、労働者も会社が危ないかな?
と感じたら、常に注意をしておく必要があります。
企業が倒産するときは、必ずその兆候があります。
賃金未払いが始まったら倒産の第一歩と受け止め、対策を講じることが重要です。
しかし、個人で対策を講じることは困難ですから、その時点で労働組合を結成し、みんなで力を合わせて対応することが必要です。
この場合、労働組合といっても、自分たちだけで企業内組合をつくっただけでは、力不足になる可能性があります。
県労連などの上部団体に加入したり、一人でも加入できる労働組合に加入したりして、県労連やローカルユニオンが蓄積してきた経験と知恵と力をを借りることが、未払い賃金を確保する道につながります。