労働組合は自主的な団体ですから、経営者の許可は必要ありません。
役所に届け出ることは、必ずしも必要ではありません。

ずいぶん前の話ですが、労働者全員の署名をもらい、経営者に対して「労働組合をつくることについて、みんな賛成しているので、労働組合をつくることを許可してください」と社長に談判した労働者がいました。

その労働者は、翌日、解雇を言い渡されました。

沖縄県労連の前身の一つ、全沖労連(全沖縄労働組合連合会)に持ち込まれた相談の一つです。

労働組合をつくるのに、経営者の許可は必要ない

ということを、労働者が理解しておれば、解雇されることもなく、働きやすい職場をつくるためにその行動力が行かされたかも知れません。

その労働者を仮にAさんと呼ぶことにします。

Aさんが語った解雇された事情は次のようなものでした。

Aさんは、ある船舶会社で働いていたのですが、あまりの労働条件のひどさに我慢できなくなり、労働組合結成趣意書を作成し、労働者全員から賛同の署名を集めることに成功しました。

そこで、署名を携えて社長のところに行き、「社長、全員が労働組合をつくることに賛成してくれました。ここに署名を持参してきました。労働組合をつくることを許可してください」とお願いしたのでした。

Aさんは、全員の署名もあることだし、社長だって許可してくれるだろう、と期待していました。

しかし、社長の口をついて出た言葉は、Aさんの期待を一瞬にして打ち砕くとともに、奈落の底に突き落とすのに十分でした。

翌日、社長に呼ばれたAさんは、社長から「君はそんなに会社にたいして不満があるのか。そういうことならこの会社にいることはない。明日から来なくて結構だ」と、即時解雇を言い渡されたのでした。

今でも、労働組合をつくろうとするとき、

「社長の許可は必要でしょうか?」

「労働組合をつくったら、どこかに届け出なければならないのでは?」

と質問をされることがありますが、そんなことはありません。

労働組合は、労働者が自主的に結成する団体です。
会社の許可がなければつくれない訳ではありませんし、必ずどこかの役所に届け出なければならないこともありません。

2人以上の労働者が、「労働組合をつくろう」と合意すれば、それが労働組合です。
会社に対して、団体交渉を申し入れることもできます。

ただし、不当労働行為の救済申立てなど、労働組合法による保護を得ようとする場合や、労働委員会の委員を推薦しようとする場合、労働組合を法人化しようとする場合などには、労働委員会の資格審査を受けることが必要です。

もっと詳しく学習したい方は、労働組合づくりの基礎知識が参考になります。