現代の社会においては、契約は契約当事者双方の合意があって成り立ちます。

ところが、多くの企業では、労働者の労働条件は、社長の鶴の一声で決められているのではないでしょうか?

待遇に不満を漏らそうものなら、替わりはいくらでもいるから、「うちの会社に不満があるのなら、辞めて他の会社にいったらどうだ」と言われかねません。

そう言われるだけならまだしも、実際に「お前はクビ」などと、解雇を宣告される場合もあります。

でも、これが本来のあり方ではありません。

労働基準法第2条は、「労働条件は、労働者と使用者が対等な立場で話し合って決めるべきもの」と定めています。

また、労働契約法第3条には、労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。と定められています。

日本に存在するどの法律にも、「労働者の労働条件は、使用者が勝手に決めて良い」とは書いてありません。

しかし、労働組合のない多くの職場では、「話し合って決める」など、ほとんど不可能に近い状態です。

法律に違反するこうした事態が、なぜ、まかりとおってしまうのでしょうか。

それは、経営者と労働者では経済的な立場がまったく違うからです。

経営者は「今の条件でも働きたい人はいっぱいいる。お前の言うことを聞いてまで、お前を雇うことはない」と考えます。

一方、労働者は解雇されると収入がなくなり、明日からの生活に困ってしまいます。

こうした事情が、本来あってはならない「労働者の労働条件を経営者が一方的に決める」土壌を生み出しています。

ですから、労働者が経営者に一人で立ち向かうことは、なかなか困難です。

このように一人では力の弱い労働者でも、労働組合を結成することによって、経営者と対等な立場を確保し、自分たちの思いを経営者にぶつけることが可能になります。

経営者と労働組合が話し合うことを"団体交渉(団交)"と呼びますが、経営者は誠実な態度で団体交渉に臨む義務(誠実団交応諾義務)を負っています。

団体交渉をとおして「労働条件は話し合って決める」ことができるようになります。

ある企業の臨時労働者が労働組合を作り、要求を一歩一歩実現していました。

この労働組合の仲間に、「労働組合を作って、一番何が良かったか」と尋ねると、次のような返事が返ってきました。

「要求が実現するのはうれしい。しかし、それよりも、これまでは会社で会社役員の方と出会っても見向きもされなかった。労働組合をつくり、団交ではようやく対等の立場で話し合いができるようになった。そうしたら、会社役員の方ともあいさつが交わせるようになったのがうれしい。人間として認められたと感じる」と語っていました。

労働組合をつくることによって、労働者の労働条件だけでなく、職場の上司や役員との関係も改善することができるようになることがあります。

 もっと詳しく学習したい方は、労働組合づくりの基礎知識が参考になります。