最高裁は4月7日、年棒制の医師が訴えていた残業代の支払いを認める判決を言い渡しました。

事案の概要は、年俸1700万円の外科医が、午後5時半から9時までの労働が「年俸に含まれている」として残業代が支払われなかったことから、残業代の支払いを求めた訴訟です。なお、医師は残業代は年棒に含まれることに同意していました。

この裁判では、1審の横浜地裁が「生命に関わる医師の業務には、労働時間に応じた賃金支払いはなじまず、高額な年棒に残業代が含まれるとみなしても不合理ではない」として医師の訴えを退け、2審の東京地裁も1審判決を維持していました。

最高裁は、2007年に「年俸制の採用で、ただちに時間外割増賃金を支払わなくていいことにはならない」とし、「通常の賃金と残業代が区別されることが必要」と判示しています。

今回の判決は、生命に関わる業務で、高額な年棒を支給されている医師であっても、例外とすることはできないことを明らかにした判決です。

往々にして、長時間労働を嘆きながらも、「年棒制だから」と諦めている労働者がいます。

年棒制であれ、月給制であれ1日8時間、週40時間を超えて働かせた場合、使用者は残業代を払わなければなりません。賃金をどの単位(時、日、月、年)で決めるかということで残業代を払わなくてもよいという理屈にはなりません。

年収1075万円以上の高度プロフェッショナルに残業代を支給しないとする安倍政権の〝働き改革〟は、判決に照らしても逆行するものです。