沖縄県労働委員会は、宮古島市が行った非常勤嘱託員の雇い止めに係る労働組合への対応について、誠実団交義務を果たしていないとして、不当労働行為を認定する命令書を、7月8日に交付しました。

この事件は、宮古島市の非常勤職員が、2010年2月25日に「雇用期間満了予告の通知について」との文書により、同年3月末日での雇い止めを通告されたことにたいし、非常勤職員が所属する沖縄県自治体一般労働組合(係争中に、沖縄県公務公共一般労働組合に名称変更)が、「雇い止めを行わないこと」を要求事項として団体交渉を申し入れたことに関し、その後の経過が団交拒否に当たるとして、自治体一般労働組合が沖縄県労働委員会に救済を求めていたものです。

命令書の主文は、下記のとおり。


1,非申立人は、今後、申立人から、上里清美を含む申立人組合員の委嘱期間満了に関わる事項についての団体交渉の開催の申入れがあったときは、誠意を持って速やかにこれに応じなければならない。

2,その余の申立てを棄却する。
  管理人注)その余の申立の内容は「ポストノーチス」(謝罪文の掲示と交付)のことです。


命令書は、「使用者には、誠実に団体交渉に応ずる義務があり、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならない。すなわち、使用者は、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示する等、労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論する等の努力をすべき義務がある。」と述べ、宮古島市の主張を一つ一つ検討しています。

その上で、「組合からの組合員Xの雇止め等に係る一連の団体交渉の申入れに対し、市が誠実団体交渉義務を果たさなかったこと及び正当な理由なく団体交渉拒否をしたことは明らかであって、これは、労組法第7条2号に定める不当労働行為に当たると認められる。」と結論づけています。

沖縄県労働委員会の救済命令を受けて、沖縄県公務公共一般労働組合は7月11日、下記の声明を発表しました。


声明文

1,沖縄県労働委員会は7月8日、当労働組合が申し立てた宮古島市不当労働行為事件にたいして宮古島市の不当労働行為を認定し救済命令を交付した。
2,この事件は、昨年3月2日、非正規職員の「雇い止め」問題の団体交渉で、市保健福祉部長が「雇用継続に努力する」、「ほかの部署で働くのはどうですか」と雇用継続を期待させる回答をしたにもかかわらず、数日後に回答を一方的に翻して、理由も根拠も示さず「雇い止め」通告をし、
当労働組合が申し入れた団体交渉も「団体交渉の必要はない」と拒否したことが不当労働行為(不誠実交渉・団体交渉拒否 労組法第7条2項違反)にあたるとして沖縄県労働委員会に救済申し立てした事件である。

3,沖縄県労働委員会は、「雇用期限である委嘱期間満了前に団体交渉を行う高度の緊急性及び必要性が認められる」とし、「市は、組合に対し(雇い止めの)具体的な説明を行っていない」、「団体交渉を拒否したことは、正当な理由によるものは認めることができない」と認定した。さらに、「市は、人事については市に一定程度の裁量権がある旨主張しているが、そのことが、労働組合に対して十分に説明を行う義務としての誠実交渉までも免除するものと認めることはできない」とし、行政当局が人事の裁量権行使にあたっても労働組合にたいする説明責任・誠実交渉義務が生じると判断したことは重要である。

4,本件の特徴は、市長に次ぐ行政の要職を担う副市長が直接に不当労働行為を指示したことにある。担当部局の保健福祉部長が雇用継続に前向きな姿勢を見せたにもかかわらず、副市長は「雇い止め」を指示し、団体交渉にも「応じる必要はない」と指示したことが判明した。宮古島市は、相次ぐ職員の不祥事をうけて「コンプライアンス(法令順守)」を職員に求めているが、その職員を監督・指導する立場の副市長自らが労働基本権侵害の法違反を侵すなど前代未聞であり責任は重大である。いま国では、公務員の「労働基本権回復」問題が議論されているが、副市長の行為は、公務員の「労働基本権回復」の流れにも逆行し許されるものではなく、正常な労使関係を構築する重要性の認識も欠乏するものと言わざるを得ない。住民と労働組合にたいして誠実に向き合い、問題解決のため努力する姿勢を強く求める。

5,沖細県公務公共一般労働組合、宮古島ユニオンは、行政による労働基本権侵害をゆるさず、正規・非正規を問わず、自治体とその関連で働くすべての労働者の生活と権利を守るため、引き続き奮闘する決意である。

  2011年7月11日

自治労連・沖縄県公務公共一般労働組合
執行委員長 長尾 健治

沖縄県公務公共一般労働組合宮古島支部
執行委員長 上里 清美