県内のある企業に、時給1000円で採用された労働者がいました。

仕事を始めてやがて2か月目にさしかかろうとした頃、経営者から突然「あんたは給料が高いから、来月一杯で辞めてくれ」と言われました。

「辞めてくれ」との言い方は、合意解約の申込ですから、本来なら「嫌です。辞めません」と言えば済む話なのですが、往々にして解雇の意思表示として使われます。

それで、その労働者は「解雇であるなら解雇予告手当を出さなければいけないのではないですか?」と経営者に尋ねました。

経営者は「1か月以上前に言っているのだから、出す必要はない」と答えたものの、労働者の再度の質問に「調べてみる」ということになりました。

経営者の言うとおり、解雇予告手当は30日以上前に予告する場合、支払う義務はありません。

そのことを巡って、労基署に出向いて払う必要はないと教えてもらった経営者は、数日後に、その労働者に向かって「お前は嘘つきだ。帰れ、明日から来るな」と、即時解雇を言い渡してしまいました。

後になって、「明日から来るなと言ったのは自宅待機の意味だ」と釈明していますが、それが自宅待機だと認めるのはなかなか難しいところです。

県労連に相談にきたので、ユニオンに加盟してもらい、解雇予告手当と解雇に伴う慰謝料を請求して団体交渉を申し入れたところ、経営者が県労連事務所に乗り込んできました。

曰く。彼は嘘つきだ。話がしたいのならまず謝れ。こんな請求するのは強請(ゆすり)だ。あんたも共同正犯だ、警察にも相談する、などと、ユニオン書記長の私にまくしたてて話になりません。

警察に行ったとしても、警察がまともに取り上げるとは思えませんが、事情を聞くくらいはするかも知れません。

私はどうってことはありませんが、組合員に呼び出しがあった時には、精神的負担が重すぎます。
きっと、夜も眠れないでしょう。

そこで、緊急に労働審判を申立てることにしました。
裁判所で扱っている事案について、強請だとかは警察も言わないでしょうし、「今、裁判所であらそっていますから」と、呼び出しを断ることもできるでしょう。

結局、2か月経過しても警察からの呼び出し・連絡はありませんから、本当に警察に行ったかどうかは定かではありません。

ちなみに、労働審判は代理人を立てずに頑張っています。

1回目の審判を終えたところですが、早ければ次回の期日で和解が成立する可能性が高いと思われる進行となっています。