中部のとある企業で働いていた労働者(比嘉さん・仮名)の相談を受けて、420万円の賃金を支払うよう求める団体交渉を会社に申し入れました。

内訳は歩合給と残業代です。

団体交渉にはすんなり応じたものの、「比嘉さんは取締役だったので、会社に払わなければならない義務はない」と、まあこんな感じで取り付く島もないという態度です。

取締役と言っても、実際に取締役の仕事をしている訳でもなく、それなりの報酬を得ていた訳でもなく、仕事は平社員としての仕事をしていました。

取締役への就任を了解した経緯は、社長から「人数が足りないから、名前を貸してくれ」と頼まれて貸しただけ。

社長自体「取締役会を開いたことは1回もない」と言うのですから、株式会社としての統治がどうなっているのか、むしろ心配になるくらいなのですが、それはともかく「取締役だった」の一点張りです。

賃金請求事件というのは、時効の問題があって請求してから6か月以内に裁判所に訴えなければいけません。

というような事情もあり、自主交渉で解決する見込みがないのであれば、早めに裁判を起こすのが早道。

未払い賃金に同額の付加金、賃確法に基づく14.6%の遅延利息を請求する本裁判を起こしました。

労働組合と話し合いで解決すれば、いくら多くても420万円で済んだのに、裁判になると約840万円に遅延利息を請求されるのですから、どっちが会社のために良い選択なのでしょう。

もっとも、弁護士にも相談したとのことでしたので、実態はどうあれ「取締役という肩書があり、登記されておれば賃金は払わなくても良い」との確信があるのでしょう。

名ばかり取締役になると当然払うべき歩合給も、残業代も払わなくても良いということになれば、それは人件費を削減する最も確かな方策となりえます。

こんな事を通用させるわけにはいきません。

名ばかり管理職(本来は管理職ではなくて管理監督者なのですが)や名ばかり取締役にさせられて、残業代が払われない問題でお悩みの方は、全労連の通話料無料のフリーダイヤル 0120-378-060 にお気軽にダイヤルしてください。

管理職として実際にその職責に就いている方でも、管理監督者でない限り残業代は請求できます。