どのような紛争が、労働審判の対象となるかについて、労働審判法は「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」と定めています。

具体的にはどういうことでしょう。

労働審判は、労働契約に関する個人と事業主との間の紛争が対象となりますので、「会社にお金を貸したが返してもらえない」などいうのは対象外となります。 

また、労働組合として申立てることもできません。
労働組合法で規定されている不当労働行為についても、これは個別紛争ではなく集団的な労使関係になりますので、申し立てはできないことになります。
労働委員会のあっせん制度では、「1万円の賃上げ要求で交渉してきたが、会社が1,000円の回答しかしないので交渉が進まない」などのような場合には、労働組合としてあっせん申請することはできますが、労働審判の対象とはなりません。

ただし、みんな1万円の賃上げがなされている場合に、自分だけが1,000円しか上がっていない場合は、申立てることは可能です。

民事紛争と規定しているのは、刑事事件や行政事件は扱わないという趣旨ですが、特に断らなくてもこれらの事件が申立てられるとは考えにくいのですが、念のためなのかも知れません。

労働審判委員会は、事件の内容が複雑で、3回で解決が見込めないと判断した事件については、労働審判法第24条により、審判を行わず終了することができます。