労働審判制度の特徴として、柔軟な解決を図ることができる制度として紹介しました。

 労働審判での柔軟な解決

今回はその一例を紹介します。

運送会社と「委託契約」を締結して、自分が所有する車を使って荷物を配達していたAさんが、「労働者であることを認めて、残業代を払え」と労働審判を申し立てたケースです。

「車を所有している」という点を除けば、その働き方は労働者そのものです。

報酬は「出来高払い」で、配達する荷物によって単価が決まっています。

労働者性を争うことになりますので、会社の出方次第では3回以内に終われるかどうか、少し気がかりでしたが本裁判に訴えるほどの請求金額ではないので、労働審判に申立てをすることにしました。

 申立てに至る事情はこちら

労働審判委員会は、「労働者とは認められないが、申し立てをしていることでもあり、紛争を今後に持ち越して長引かせないために、会社がAさんに相応の金員を支払って解決する」との判断を示して解決に至りました。

労働者性を認めない点での不服はあったのですが、そのことはさておいても、通常の裁判であれば労働者でないAさんが、労働者の権利である残業代等の請求をしたのですから、「原告適格なし」として敗訴になってしまいます。

労働審判は、このような紋切り型に結論を出すのではなく、紛争を解決するという視点で解決をはかることもできる制度です。