労働審判においては、その解決は柔軟に解決することが可能と言われています。
では、どのように柔軟なのでしょうか?
例えば、解雇された労働者が、「解雇の無効」を訴えた場合を考えて見ましょう。
手続きをすすめる中で、和解(労働審判では調停と言います)が行われます。
労働者が「本当は会社に戻りたくない。6か月分の賃金相当額を会社が出してくれるのであれば、会社に戻らなくても良い」と、本音を明かしたとしましょう。
しかし、会社は4か月分なら出すがそれ以上のお金は出せないという姿勢を崩しません。
このような状態では、会社との合意は得られず、和解できないことになります。
この様な事例で、通常の民事裁判と労働審判では、次のような解決も可能となります。
民事裁判で出される判決は、解雇が無効か、有効か、二者択一の結論しかありません。
その判決に不服であれば、上級審で争いが続くことになります。
労働審判ではどうでしょうか。
労働審判委員会(労働審判官と2人の労働審判員で構成)は、審判を出すにあたっては、「当事者間の権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決をするために必要な審判」を行います。
解雇は無効との結論を得ている場合であっても、単に「無効」とするだけでなく、無効であることを踏まえて、労働者が会社に戻らないのであれば、会社に5ヶ月分の賃金相当額の支払いを命じることもできるのです。
そうであれば、会社も1か月分の上積みなら「やむを得ない」と納得する可能性もありますし、労働者も「あと1か月分の上積みのために、これ以上時間はつぶせない」と考える可能性もあります。
このように、労働者が解雇の無効を申立てたからと言って、yesかnoかだけではない解決策を示すことができます。
ただし、労働者が金銭解決を望まず、あくまでも職場への復帰を求める場合に、金銭解決の審判を出すことは、法律上は可能との見解もありますが、実際にはあってはならないでしょう。