私が直接テレビを見たわけではありませんが、昨日は左の画像がtwitter上で飛び交っていました。(どなたが最初にアップされたかわかりませんが、勝手に拝借してすみません。)
画面には竹中平蔵氏が映しだされ「正規雇用という人たちがですね、恵まれ過ぎているいるんです」「正規雇用という人たちが、非正規雇用者を搾取しているわけです」との字幕が流れています。
twitterでは「竹中平蔵がテレビに出るときは、パソナ会長の肩書ではなく、学者という中立面で出てくる」などの書き込みがあふれています。
慶応大学竹中研究室ホームページによれば、彼の研究領域キーワードは経済政策論、日本経済論、マクロ経済学とあります。
まがりなりにも彼は経済学者を名乗っています。
「正規雇用者が恵まれすぎている」という竹中氏の認識には呆れるばかりですが、今日のテーマは写真右側の「正規雇用者が非正規雇用者を搾取している」との点に絞り、彼が熱心に推進する新自由主義や構造改革等にも言及しません。それは又の機会とします。
結論を先に述べれば、「恵まれすぎている労働者」が「恵まれない労働者」を「搾取する」ことが、どう逆立ちしてもあり得ないのは、太陽が地球の周りを回っていると主張するのと同じレベルの話で、まさしく“そんなアホな”というしかない話です。
高い学費を払って、愚にもつかない珍論を学生に教えているのだとすれば、学生があまりにも気の毒です。
搾取というのは、資本家が労働者を搾取するのであって、例え「恵まれすぎた正規雇用者」であれ、「恵まれない非正規雇用者」であれ、資本家に搾取されていることに変わりはありません。その上、搾取に加えて悪どい収奪の被害にさらされているのが労働者であり、非正規雇用者は正規雇用者に比べて、相対的にその度合がひどいということです。
マルクスは言っています。「労働力の価値は、資本の強欲によって常に引き下げられようとする。」
労働者は賃金を低く抑えられようとする圧力にいつも直面しており、それに抵抗する力が弱まれば当然賃金の低下も大きくなるのですから、労働組合の組織率が低く、それだけ抵抗力が弱い非正規雇用者が劣悪な労働条件に見舞われることになります。
非正規雇用者の「恵まれない」労働条件は、「恵まれすぎた」正規雇用者のせいではなく、竹中氏に代表される資本家の強欲にあるのです。
詳しい議論はできませんが、自分の価値以上の価値を生み出すものが労働者の労働力です。
例え、労働者が自分の労働力の持つ価値どおりに賃金をもらったとしても、労働力の価値以上に生み出した価値が剰余価値として資本家の懐に入る、というのが搾取論の本質的なところであって、そこには労働者が労働者を搾取するとの考えが入り込む余地はありません。
アダム・スミスやリカードも、労働が価値を生み出すとの「労働価値説」にたどり着いています。
労働者が労働者を搾取するという説は、その後の経済学の学説では、竹中平蔵氏が最初で最後ではないでしょうか?
竹中平蔵教授が、臆面もなく愚にもつかない珍論を振りかざすのは、労働者を搾取している竹中氏を含む資本家(階級)を免罪するとともに、労働者間の対立をことさら煽って、労働者、国民の怒りが自分たち資本家に向くのをそらす意図を持っているのでしょう。
それとも、経済学者として本気で正規雇用者が非正規雇用者をを搾取しているという説を唱えているのであれば、きちんとその論拠を示してほしいと思います。
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