政府は、これまで普天間の危険性を除去するためには、辺野古への移設が唯一と言ってきた。

仲井真弘多前知事に約束した普天間の5年以内の運用停止についても、進展しないのは沖縄県が辺野古移設に協力しないからであり、運用停止は沖縄県の協力が前提だとして、沖縄県に責任をなすりつけてきた。

これらの言い方からすると、沖縄県が辺野古移設に協力すれば、運用停止で米側と交渉する。

普天間の代替施設として、辺野古に新基地ができれば普天間基地は返還される。

と理解される。

ところが・・・である。

6月15日の参院外交防衛委員会で、稲田防衛大臣が「米側との条件が整わなければ返還されないことになるが、そうのようなことがないようにしたい」と答弁したことから、政府のこれまでの言い分が「印象操作」であったことがはっきりしてきた。

稲田防衛大臣の答弁の根拠となるのは、2013年4月5日の「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」である。

統合計画によれば、普天間飛行場の項には、返還条件として8項目が列記され、返還時期として「返還条件が満たされ、返還のための必要な手続の完了後、2022年又はその後に変換可能」と記されている。

返還条件の8項目は次のとおりである。

・海兵隊飛行場の関連施設・海兵隊飛行場関連施設等のキャンプ・シュワブへの移設。

・海兵隊の航空部隊・司令部機能及び関連施設のキャンプ・シュワブへの移設。

・普天間飛行場の能力の代替に関連する、航空自衛隊新田原基地及び築城基地の緊急時の使用のための施設整備は、必要に応じ、実施。

・普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善。

・地元住民の生活の質を損じかねない交通渋滞及び関連する諸問題の発生の回避。

・隣接する水域の必要な調整の実施。

・施設の完全な運用上の能力の取得。

・KC-130飛行隊による岩国飛行場の本拠地化。

問題になっているのは、「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善。」である。

この民間施設の点に関して、米会計監査院は候補地として12か所を挙げ、そのうち1か所が県内としているが、稲田防衛大臣は「米政府との個別のやり取りは控えたい」と言及を避けている。

稲田防衛大臣が言及を避けたとしても、それがどの空港を指すかは明らかである。

普天間基地の滑走路は2800メートルで、辺野古新基地の滑走路は2800メートルとなっている。

普天間基地と同等以上の滑走路を持つ県内の飛行場は、那覇空港3000メートル、現在建設中の第二滑走路2700メートル、他には下地島空港の3000メートルがあるが、「緊急時における」使用であることを考えれば、下地島空港であることは考えにくい。

残るは那覇空港しかないことになる。

沖縄県は「那覇空港は絶対に使わせない」と7月5日の県議会で答弁している。

辺野古に新基地ができたとしても、沖縄県がこの姿勢を貫く限り、米軍は辺野古新基地だけでなく、普天間基地も使用し続けるということになる。

こんな馬鹿な話はないが、そんな馬鹿な話を唯々諾々と了解しているのが日本政府である。

もう、いい加減こんな政府には見切りを付けるべきではないだろうか。

最後にマスコミの報道について述べる。

統合計画が発表された時点で、マスコミの報道の中心は返還時期、すなわち「2022年度又はその後」に主眼がおかれ、「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善。」のもつ意味について、警鐘を鳴らす内容とはなっていない。

詳報として統合計画の内容を掲載した新聞もあるが、普天間基地に関しては「【6】普天間飛行場①約481ヘクタール(全面返還)②海兵隊飛行場関連施設等のキャンプ・シユワブヘの移設など③22年度またはその後。」となっており、返還条件に関する記述はすっぽる削られている。

返還条件はそれほど重要ではないと判断したのだろうか?

疑問の残るところである。