労働基準法第27条は「出来高払制の保障給」という条項になっています。

その条文は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障をしなければならない。」となっています。

このような条文があっても、現実に第27条を活用する場面は少ないのではないでしょうか。

Aさんは、「運送契約」をB社との間で締結し、荷主であるC社に出勤して働いてきました。

仕事が順調の時は15時間労働が当たり前のような働き方でしたが、B社は「Aさんは『請負制の個人事業主』」ということで、残業代は一円も支払ってきませんでした。

ところが、C社が仕事を他の会社に振り向けるようになり、今年1月末でB社への仕事は打ち切り、1月の仕事量も極端に減ってしましました。

1月の労働時間は平均して6時間程度、賃金も月5万円弱となってしまいました。

Aさんは、退職してからいろんな所に相談するなかで「自分は個人事業主ではなく、労働者ではなかったのか。労働者であれば残業代も請求できるはず」と考えるようになりました。

働いてきた月のうち1月を除けば、残業代を請求することになりますが、仕事が減った1月分をどうするか。

残業時間がないから請求しないということではなく、1月分については労基法第27条を活用して、最低保障給との差額を請求することにしました。

そこで、最低保障給をどのように設定するかということが問題となりますが、労働基準法では最低保障給が幾らになるのかという点には触れていません。

労働基準法は、最低限の基準を設定し、それに違反する時は刑事罰を与えることによって、、法の遵守を使用者に迫る性格を持っています。

それだけに、賃金の満額を保障しているのでもありません。

休業手当が、賃金の満額ではなく「100分の60以上」を支払えば良いと規定していることにも、そのことは見て取れます。

そこで、過去3か月の賃金の平均額の6割を最低保障給に設定し、その差額を請求することにしました。

もう一つの考え方としては、最低賃金との差額を請求するとの考え方もありますが、労働者の賃金額により、差額の多い方を採用するということになろうかと思いますが、最低賃金が低い現状では、実際の問題として平均賃金の6割の方が差額は大きくなるようです。