2018年9月23日付の沖縄タイムスに、稲嶺恵一元沖縄県知事のインタビュー記事が掲載されている。

その中で、稲嶺氏は「沖縄の民意は辺野古に反対。その民意を貫こうとするのか、ぎりぎりの合意をするか、そこだけに違いがある」と述べている。

県民は稲嶺知事に「沖縄の民意を貫く」ことを求めたが、稲嶺氏は「ぎりぎりの合意」を選択した。

稲嶺氏の言う「ぎりぎりの合意」が、15年使用期限、軍民共用、沖合案等の条件だったと言える。

稲嶺氏の言葉に従って考えた時、それは沖縄の知事が❝県民の立場❞に立って、辺野古の問題を考える場合のことであって、仲井真弘多元知事の場合は、「政府と事を構えるな」発言に見られるように、沖縄の民意より政府の立場を優先するものだったと受け止められる。同じ自民党知事でも、立場に相違がある。

インタビュー記事を全文紹介する。

それは、マスコミの対応、防衛に対する国の対応に触れたくだりについて、考えてもらいたい意図による。

沖縄では基本的に60%超が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対だ。沖縄の中身は変わってない。その民意を貫こうとするのか、政府とぎりぎりの合意をするのか、そこだけに(知事判断の)違いが現れる。

政府は沖縄への認識に甘さがある。どんな立場の知事も常に民意を意識しており、全ての政府の計画にイエスと言えるわけではない。それを分かってもらえない。(今回知事選後も沖縄の対立は)悲しいが、変わらない。60%超の民意から県のトップは逃れられない。

腹が立つのは、米高官が尖閣諸島は日米安保条約の対象だと言うと、マスコミは喜び、ノーコメントだと心配そうに報じる。(本土の)皆さんは、防衛は米国がやるようなつもりでいる。沖縄県民としてむなしい。

日本は国を自分たちでどうすべきかしっかりと議論していない。「防衛」という意識がない。防衛は沖縄の問題だと決め込んでいる。

翁長雄志知事は最後まで保守系として、沖縄の思いを貫こうとした。防衛は国全体の問題なのに、小さな沖縄県だけに過重な負担を負わすのはおかしいとして辺野古移設に反対した。沖縄の基地は27年間の米統治下に強制的に接収、建設された。辺野古は(基地の過重負担の)象徴的な話だ。

(移設問題が長引いたのは)私が知事の時に首相が4人で、仲井真弘多前知事の時は政権交代もあり、政府方針が一つでなかったことが大きな問題だ。政府が《その時その時で違うことを言い、沖縄は翻弄されてきた。

私の知事時代、政府は(私が提唱した)辺野古に建設する普天間飛行場代替施設の使用期限を、「重く受け止める」とし米政府との話し合いで取り上げるなどとする閣議決定をした。しかし(その決定が2006年閣議決定で廃止されるなどし)やり残してしまった。

全身全霊を打ち込んだが、うまくいかなかったのは私の力不足だ。仲井真氏や翁長氏に迷惑を掛けた。(この気持ちは)死ぬまで持ち続ける。

安倍首相や菅官房長官は、臆面もなく「当時の県知事、名護市長の合意を得ている」と口にするが、その合意を保護にしたのは政府自身であることがわかる。