新型コロナウィルスによる経済への影響は、大きくなってきたようだ。
観光が経済の大きなウェートを占めている沖縄では、その打撃も大きく、早くも「感染拡大の影響が2月から7月ごろまで継続し、国内外から沖縄を訪れる観光客が仮に50万人減少した場合、観光収入は281億円減少する」との試算がされている。
コロナウィルスで業績が低下している企業の経営者も大変だろうと理解はできる。
そうであっても、世の中には法律があり、ルールがある。
法律やルールに則った行動をしなければならない。
一方的に賃金を引き下げようとする企業が出てきている。
沖縄県労連加盟のうまんちゅユニオンは、去る2月28日にユニオンの支部として「観光ユニオン」を結成した。
結成そうそう、組合員の一人が「会社から賃金の切り下げに対する同意をしつこく求められている」状況のもとで、至急に団体交渉を申しいれることにした。
労働条件の不利益変更は原則としてできない。
不利益変更が可能となるには、三つの方法(①労働者の合意を得て変更する、②就業規則を変えて変更する、③労働組合との協定によって変更する。)があるが、いずれも簡単にできるものではない。
労働契約法第3条及び第8条は次のように定めている。
(労働契約の原則)
第3条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。(労働契約の内容の変更)
第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
労働者の合意を得るといっても、会社の置かれた状況をきちんと説明することもなく、嫌がる労働者を何度も呼び出して合意を迫ったり、多人数で一人の労働者を威圧するように合意を得ようしたり、あるいは「合意しないと蚕になる」、「合意しないと配転する」など、脅迫的に労働者の合意を得ようとすることは、対等な立場での合意、すなわり労働者の自由意志による合意とは言えないから、形だけの合意が存在したとしても無効とされる可能性がある。
②の就業規則を変えて労働条件を不利益に変更することは、原則としてできないが、労働契約法では例外規定が設けられている。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りではない。第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
就業規則の変更による不利益変更はできないが、それをやろうとするには超えなければならないハードルが待ち構えている。「労働条件の変更の必要性」なども述べられているが、「労働組合等との交渉の状況」もハードルの一つであることから、労働組合や労働者と協議をすることなく、一方的に強行することは許されない。
③の労働組合との協定による変更では、少数組合があった場合にその少数組合員や非組合員を拘束できるのか、労働組合が組合員の意見を丁寧にくみ上げる議論をしてきたのか等々の問題がある。
いずれにしても、労働条件の不利益変更は、そうそう簡単にはできないと言える。
とは言え、労働者がバラバラの状態で、一人で経営者と相対しなければならない事情の下では、法律を活かした行動をとることは極めて困難である。
実際、労働条件の不利益変更に同意せず、頑張っている前出の組合員に対して、会社の幹部は「そんなに騒ぐのなら、何もうちの会社にしがみつくことはない。別の会社を探せばいいさあ」などと口にしている。
こんな無法を許さないために、労働組合に結集しよう!
終息しない感染症はない。コロナウィルスもいずれ終息する。
一時期の業績低下を口実に、コロナウィルス終息後も続く労働条件の改悪に合意する必要はない。
会社からの様々な攻撃にお困りの方は、全労連のフリーダイヤル 0120-378-060 に電話することをお勧めする。どこから電話しても、お近くの全労連加盟の労働組合につながる。