コスタリカ共和国は“軍隊のない国”として知られる中米の国である。

軍事費を教育、福祉、環境保護に回し、世界で国民幸福度が高い国としても知られている。

国際紛争多発地帯で、軍隊がなくしてどのように自国の平和を守ることができたのか

9条を持つ国、日本の私たちにも多くの教訓があると思うが、今日はそのことには触れない。

13年前に「君の星は輝いているか~世界を駈ける特派員の映画ルポ~」(伊藤千尋著・株式会社シネ・フロント社)を購入して、飛ばし読みしてきたが、改めて目を通して驚いた。

驚くのは教育に触れた部分だった。

その部分を紹介する。

コスタリカの学校の教科書を見ると、その充実ぶりに驚く。とくに社会の「公民」はすごい。民主主義とは何かを言葉で示すだけではない。たとえば生徒が大きくなって勤めた職場で解雇されたとして、どうすればいいのか、憲法はどう国民を守っているのか、憲法のどの条項をどう主張して解雇撤回を会社に迫るのか、などまことに実践的な教育を授業でやっている。それも先生が教える一方なのではなく、生徒が自分で調べてそれを発表するのだ。こうして法律は身につく。

この部分に触れて、私の記憶にあるのは、憲法第28条に関連して「勤労者には団結権、団体交渉権、団体行動権という大切な三つの権利があり、これを『労働三権』と言います」と習ったくらいだ。

そして、テイストで労働三権とはどんな権利でしょうか?

と問われ、準備された三つの( )に(団結権)(団体交渉権)(団体行動権)と記入して○をもらい、それで終わり。

労働組合に身を置いて、様々な相談で事務所を訪れる方に「労働三権を知っていますか」と尋ねることがあるが、全員が「さあ~」、「どこかで聞いたような・・・」との答えしか返ってこない。

そんな答えをする方が悪いのではなく、テストが終わると忘れてしまうような教育しか受けていないのが問題なのだ。

「民主主義を憲法に照らして実践する」コスタリカの教育力が、軍隊がなくても平和を維持する原動力になっている。

なぜ、コスタリカのような小さい国が、軍隊なしでやっていけるのか?

国際大学教授のカルロス・バルガスさんの答えはこうだ。

答えは簡単です。民主主義をうまく実践してきたからです。だれもが教育を受け、富に近づくことができます。人権が保証され、子ども、女性、お年寄りが社会に参加でき、社会保障が整っている状態。それが私たちの考える民主主義です。

翻って、わが日本はどうだろうか?

考えることが多い本だった。