4月14日付の「しんぶん赤旗」によれば、雇用調整助成金の相談が4万7000件、支給手続に入ったのが2859件、申請が受理されたのは214件、支給決定に至ったのはわずか2件(4月3日現在)とのことである。

最近、ある経営者の話を聞く機会があったが、「提出書類が多く、煩雑でとても申請できるものじゃない」と愚痴をこぼしていた。

それにしても、相談件数、申請手続件数、受理件数、決定件数の間に大きな乖離があるのはどうしてだろうかと考えざるを得ない。

同紙の4月17日付には、「3人の従業員に給料を支払うため、雇用調整助成金をあてにしていた。しかし、申請手続きを始めて3週間になるが、何度も追加の書類を求められ、いまだに受理されたのかどうかすら分からない。4月の給料を工面できなければ、廃業も考えざるをえない」との、零細業者の声を載せている。

説明を聞いて諦め、諦めずに申請までたどり着いても追加資料の提出を求められて受理を引き延ばされ、やっと受理されてもいつ決定となるか分からない。3か月待って支給決定。

そこまでたどり着いたのは相談した件数のわずか0.00004%。その間に廃業せざるを得なくなった零細業者もいるのだろうと懸念する。

私が相談を受けた限りでは、「明日から休業」と突然告げられた労働者が多く、良くて「半月先から休業」である。
雇用調整助成金を申請する資料の一つに、「休業協定」がある。

会社と「労働者の過半数を組織する労働組合があればその労働組合、そのような労働組合がない場合は過半数を代表する者」との協定である。その労働者代表の確認のための資料も必要となっている。

休業協定には、休業の予定期間・日数、休業の対象となる労働者の範囲及び人数、休業手当の額の算定基準などを記入しなければならない。

となると、当然ではあるが休業に入る前に協定は締結していなければならないことになる。

「明日から休業」で、休業に入ってしまったのだから、いざ、休業手当を申請しようとしても、提出するべき資料がないということになる。

他にも、事業所の状況に関する書類、生産指標の確認のための書類、所定の労働日・労働時間・休日や賃金制度の確認のための書類等の提出が求められる。就業規則があれば良い項目もあるが、10人未満の事業所で就業規則がない事業者は大変だろうと推察される。

加藤厚生労働大臣は、事前提出書類は半分程度に減らすと述べているが、半分でも大変な労力だろう。

あれも持ってこい、これも持ってこい、それで受理されたかどうか分からないでは不安は募るばかりだ。

提出書類についてはかなり弾力的に運用しないと、小・零細企業は受けにくい。

例えば、労使協定がなくても実際に休業しているのだから、賃金台帳だけで可とする。

また、生産指標では「最近3か月分及び前年同期3か月分の月ごとの売上高、生産高又は出荷高を確認できる「月次損益計算書、総勘定元帳、生産月報などの書類」と必要となっているが、売上高にする。
(注)緊急対応期間(2020年4月1日から6月30日)の休業については、生産指標の要件が3か月の確認期間を1か月に短縮され、事後提出も可能とされている。

等々、事前提出種類を簡素化・弾力化すれば、申請する事業主の負担も軽減されるし、労働局の職員の負担も軽くなり処理日数も短縮できると思うのだが。

公務員改革などの名の下に、厚生労働省の職員も減らされ続けてきたおかげで、通常の業務も過多となっているところに、コロナ関連の業務が押し寄せ、労働局の職員も大変だろう。労働局職員の負担軽減も同時にすすめる必要がある。

そして、公務員を減らし続けて良いのかという点についても、国民全体が考える契機にすべきだろう。