東京都の教育庁多摩教育事務所で働いていた労働者が、残業の実態に見合った残業代が支払われておらず、支払われたのは約4割であったとして、未払いの残業代を請求している訴訟で、東京高裁は7月28日、一審判決を支持し、東京都に約14万円の支払いを命じる判決を出しました。

判決で、東京高裁は「明示の超過勤務命令が必ず前提要件となるものではない」と指摘しているところは重要です。

この指摘は、東京都が「超過勤務といえるには事前に明示した超過勤務命令が必要」と主張している点に対して、東京高裁の判断を示したものです。

 沖縄県労連に寄せられる残業代請求の相談事例で、月に140時間超の残業をこなしてきた労働者もいます。

こうした超長時間残業は、通常は「明示の超過勤務命令」に基づいてなされているのではありません。
1日の法定労働時間である8時間では、到底こなせないような業務を押し付け、労働者がおのずと残業せざるを得ないように仕向けているというのが、長時間労働の実態です。

ある卸売会社の場合は、午前11時までに配達に出発しなければ罰金を科すなどと脅して、出発時間の厳守を強制しています。
午前8時30分の出勤時間に出勤していたのではとても11時に出発できる業務量ではありませんので、朝は7時頃に出勤し、配達から会社に戻ったあとも翌日の配達に備えて注文の確認、注文品の揃えなどを行っています。

このように「明示の超過勤務命令」がなくても、超過勤務をせざるを得ない状況を使用者がつくりだしている場合には、残業代を支払うのは至極当然のことと考えられます。