労働組合は、読んで字の如くで、労働者がメンバーとなって結成する組織です。

労働組合法第2条は、「この法律で『労働組合』とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合体をいう。」と、労働組合の性格を規定しています。

労働組合の主体となる「労働者」とは、一体どういう人達なのか?

この点について、これまで多くのたたかいが展開されてきました。

業務委託契約や委託契約などで働いている「個人事業主」は、労働組合法上の労働者なのか否か。

労働組合法では、労働者をどのような者として捉えているのかを見てみましょう。

労働組合法第3条は「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」と定めています。

業務委託契約を結んで働いている者が受け取る報酬や手数料などは、第3条でいう「給料その他これに準ずる収入」といえるのかどうか、という点から始まって、様々な議論が展開され、裁判でも多くの事件が審理されてきました。

ところが、不思議なことに労働組合法では「賃金とは何か?」との定義がないのです。

そのため、裁判例等では使用従属関係があるかどうかが重要な争点となってきました。

そして、判例の積み重ねの上に、2011年7月、労使関係法研究会は、労働者性を判断する要素を整理して発表しました。

<基本的な判断要素>

① 事業組織への組み入れ

   労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし必要な労働力として、組織内に確保されているか。

② 契約内容の一方的・定型的決定

  契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。

③ 報酬の労務対価性

  
   労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。 

<補充的判断要素>

① 業務の依頼に応ずべき関係

  労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。

② 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

  労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行なっていると広い意味で解することができるか、労務の提供̕にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。

こうしたことを受けて、厚生労働省は

◯ 労働組合法上の労働者は、これらの判断要素を勘案して、同法の趣旨から判断する。仮に基本的要素の①から③までの一部が充たされない場合であっても、直ちに労働者性が否定されるものではない。

◯ 各要素を単独に見た場合に、それ自体で直ちに労働者性が肯定されるとまでは言えなくても、補充的判断要素を含む他の要素と合わせて総合判断することにより、労働者性が肯定される場合もあることに留意する。

◯ 各判断要素の具体的検討にあたっては、契約の形式のみにとらわれることなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断すべき、としています。

本来、労働者として雇用すべきところ、安上がりの労働力として使用するほか、労使関係や社会保険料負担から逃れ、税務関係等々の事務負担軽減などを狙って、業務委託契約などで「個人事業主」にしている企業が増えています。

もし、あなたが業務委託契約などで「個人事業主」にさせられているなら、上記の判断要素に照らして考えてみてください。

そして、労組法上の労働者に当たるのではないか?

と思わる時は、全労連の労働相談ダイヤル 通話料無料の 0120-378-060 までご連絡ください。

お近くの労働相談センターにつながります。

 

この記事は、2013年3月1日の記事ですが、ブログ記事の順序を見やすいものとするために、2010年8月1日の日付でアップしています。