11月13日付しんぶん赤旗の国際面に、「ナチスのユダヤ人襲撃80年 ドイツは記憶し続ける 大統領が演説で表明」で、11月9日にドイツ議会で行ったシャタインマイヤー大統領の演説を紹介している。

シャタインマイヤー大統領の演説は、水晶の夜(1938年11月9日に起きたユダヤ人迫害・虐殺事件)に関してのものである。

しんぶん赤旗の記事によると、大統領は「ドイツ各地で一斉にシナゴーク(ユダヤ教礼拝所)への放火やユダヤ人の殺害などが行われた同事件について『暗闇に紛れてのものでも、一晩だけのポグロム(少数民族への迫害)でもなく、衆人環視の下で行われた』と指摘。ナチスの突撃隊は党員だけでなく、『隣人も略奪者、実行者となった』と一般国民の加害責任にも言及しました。」

「事件の5年後にナチス政権が誕生し、欧州全土で何百万人が命を奪われた」、「今こうした犯罪を思い起こすことは不名誉であり、終わらせなければならないという主張が繰り返されるようになっていると警告。」

「我々ドイツでそれを記憶することを、今日も将来もやめることはない」と述べました」

シュタインマイヤー大統領は、昨年10月3日のドイツ統一記念日にも、同様の演説を行っている。

前後の脈略は省きますが、「我が国の歴史に対する責任には終止符が打たれることはありません。・・・この国に属しているということは、その大きな長所も、また、その類まれな歴史的責任も共有するということを意味しています。私にとっては、これこそがドイツの啓蒙的愛国精神に含まれると思っています。」と述べている。

ヴァイツゼッカー大統領演説集の訳者解説で、永井清彦氏は「アメリカ、フランスと違って、ドイツの大統領には権限がない。閣議を主宰するわけではないし、現実の政策決定からは遠い。ヴァイマル憲法下、「代理皇帝」と呼ばれるほど大きな権限が許された大統領が、ヒトラーを「合法的」に任命した経験から、戦後の基本法(憲法)はその権限に大幅な制約を加えている」と記している。

それにも関わらず、ドイツ大統領の言葉には、人の心に訴える力が宿り、世界の人々に感銘を与える演説が多い。

シュタインマイヤー大統領は、過去の歴史を「記憶し続ける」、「責任には終止符が打たれることはない」と述べている。また「歴史の負の部分も含めて歴史的責任を共有することこそ啓蒙的愛国精神」とも述べている。

過去の歴史に向き合うことなく、あったこともなかったことにし、歴史の暗部から目をそむけ、歴史から消し去ることが愛国心であり、真摯に歴史に向き合うことに対して“自虐史観”だと、やれ“反日”だなどと悪罵を浴びせる風潮が強まっている我が国の状況と比べると、深く考えさせられる。

シャタインマイヤー大統領の11月9日の演説全文を呼んでみたい。

演説自体はドイツ大統領府のホームページに掲載されているが、ドイツ語に限らず、外国語にはまったく素養がないので、どなたか訳して貰えれば有り難いのだが。

しんぶん赤旗編集部で訳し、紙面に掲載できなくてもホームページにアップしてもらえば最も良いのだが、この投稿が関係者の目にとまることはないだろうなあ。