過労死安倍「働き方改革」の焦点となっていた繁忙期の残業時間について、安倍首相裁定で「月100時間未満で決着」などと報道されている。

何をか言わんや、である。

それまで経団連が1時間以下、連合が1時間未満を主張し、「1秒の攻防」とも評されているが、99時間59分59秒働かされて“過労死”でもしたらたまったものではない。

「カローシ」が国際的に通用する不名誉を受けながら、また、過労死防止法を制定したにもかかわらず、なぜ、過労死ラインの残業時間を法制化しなければならないのだろうか?

「過労自殺した電通社員、高橋まつりさんの母幸美さん(54)は13日、1カ月100時間の残業を容認する案に対し、「過労死遺族の一人として強く反対します」とのコメントを出しました。「長時間労働は健康に極めて有害なことを政府や厚生労働省も知っているのに、なぜ法律で認めようとするのでしょうか」と批判しています。」と、3月14日付のしんぶん赤旗は報道しているが、高橋さんの母親ならずとも、これを歓迎する労働者はいないと思う。

厚生労働省は、「過重労働による健康障害を防止するために事業者が講ずべき措置」を定めているが、そのなかには次のような一文がある。

下記は、厚生労働省のサイトにも掲載されているPDFリーフの引用である。

<以下、引用>
  近年の医学研究等を踏まえ、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患
の労災認定基準を改正し、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、これまで発症前1週間以内を中心とする発症に近接した時期における負荷を重視してきたところを、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務による明らかな過重負荷として考慮することとした。この新認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果によると、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるとの観点から、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安が次のとおり示された。
 (1)発症前1か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと判断されるが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるものと判断されること。
 (2)発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されること。

<引用おわり>

99時間59分59秒になると(あるいはそれより多少少なくとも)、“おおむね”でくくると過労死認定と判断される可能性が高い。

現に、残業85時間の場合の突然死を労災と認める判決も出ている(2017年2月23日、名古屋高裁判決)。

99時間59分59秒残業して過労死する労働者が出た場合、誰が責任をとるのだろうか。

企業は「法律の範囲内で働かせているので、会社に責任はない」と言うのは明らかだろう。

これに同意した連合の責任も思いと言わざるを得ない。

こんな働かされ方はまっぴらゴメンだ。

法案として国会に出させてはならない。

法案として出てきた時は、廃案にしなければならない。