真面目に働いてもまともな生活ができない、ワーキングプアと呼ばれる労働者が増えています。
この問題に、ちょっとだけ経済学的に、自分なりの考え方をまとめてみることにしました。

働いても働いてもまともな生活ができない状況は、「賃金が労働力の価値どおりに払われずに、価値以下に切り下げられている」と言えます。

労働者は、自分の身体に備わっている働く能力を資本家(会社)に売り、その代金として給料(賃金)をもらい、それで生活しています。労働力の価値を現実に流通する「お金」で表した値段が給料ということになります。
給料は、自分が労働力を維持し生活していくために必要な費用、スキルアップのための費用、次の世代の労働力として子どもを産み・育て、必要な教育を受けさせるための費用等を充たすことができる額であることが必要です。

一般に、商品の価値はそれに含まれる労働力の量によって決まり、それは商品を生産するために要した時間によって測られますから、給料は生活に必要な物資の生産やサービスに必要な時間に相当する金額となります。
価値が等しい物どうしが交換されるのが交換(売買)の原則(等価交換)ですから、労働力の価値どおりに給料が支払われていれば、標準的な生活はできるということになります。

どんなに働いても生活が苦しいという状況があるのは、給料が価値以下に切り下げられているからにほかなりません。
給料は等価交換の原則が貫かれないのです。
労働力は生身の身体に備わっているのですから、売り惜しみできません。
労働者は、生きていくためには、悪い条件であってもどこかに就職して働かざるを得ないという事情がありますから、労働者は弱みを抱えています。
資本家(会社)はどうかというと、労働力を売り惜しみして高い労働条件を欲しているAさんを雇う必要はなく、安くても働きたいというBさんを雇えば良いのです。いわば、労働者どうしが労働力の安売り競争をしているのです。

失業してすぐにでも仕事に就きたい失業者が大勢いればいるほど、労働者どうしの競争も激しいものとなります。
この競争は、現に仕事をしている労働者にも影響します。
比較的待遇の良い正規労働者から、より待遇の悪い非正規労働者に置換えられるのは、その一例でしょう。

このような状況を改善するために、労働者は団結する必要があります。
労働組合に団結し、「これ以下では労働力を売らない」という約束を資本家と取り交わすことが重要です。
以前は正規での採用が当たり前だった時代から、今では一つの職場に正規労働者とパート、臨時、契約、アルバイト、派遣など様々な雇用形態の労働者が混在しています。
どのような雇用形態であれ「うちの職場では●●●●円以下では働かさない」職場での最低賃金、「私の県では●●●●円以下では働かせない」地域の最低賃金を引き上げていくことが、ワーキングプアをなくしていくために欠かせない課題となっています。

全労連は「全国一律」で「時給1000円」の最低賃金実現をめざして運動を展開しています。
時給1000円でも十分とは言えませんが、それが実現すれば「労働力の価値どおりに払われる賃金」に近づくことになります。

多くの働く仲間の皆さんが、普通に働けば普通の暮らしができる社会をつくるため、私達と一緒にワーキングプアをなくす運動に参加していただくよう呼びかけます。
全国どこからでも通話料無料のフリーダイヤル、0120-378-060 にダイヤルすれば、お近くの全労連の労働組合につながります。

<追補>賃金が労働力の価値どおりに払われたとしても、搾取は存在します。
搾取を強めるものとしての長時間労働(絶対的剰余価値の生産)や労働密度の強化(相対的剰余価値の生産)などはあるにしても、「生活が苦しいのは搾取されているから」というだけでは十分ではないと考えています。