経団連は6月30日、賃上げは2%を超えたと発表した。
経団連の加盟企業は大企業である。その大企業で2%である。
片や5月の物価上昇率は前年とくらべて3.4%上昇している。
賃金は目減りしているのだ。
その後も、ガソリン価格など上昇は続いているので、さらに賃金の目減りが進んでいると想定される。

2013年の賃金も前年に比べて0.2%減少しているとして、厚生労働省は8月から雇用保険の失業給付の上限を0.3%引き下げる。

このような中で今年度の最低賃金引き上げの議論が、中央最低賃金審議会や各地の地方最低賃金審議会で行われる。
沖縄県労連は、7月25日に「最低賃金を時給1000円に」を中心に、労働局長・最賃審議会長に対して行った。
各地でも同様の要請が行われている。

この要請事項に対して、毎年判を押したような答えしか返ってこない。
最低賃金法第9条に基づいて、労働者の生計費及び賃金、事業の支払い能力、そして埼葛保護との整合性に配慮し、第10条に基いて審議会で審議していただくことになっている。こんな感じである。

最低賃金法第10条は「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金を決めなければならない。」ことを定めている。
あくまでも、最低賃金を決めるのは厚生労働大臣又は都道府県労働局長であり、審議会ではない。

そして同条第2項は「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。」とある。

安倍晋三首相はアベノミクスに成否のカギを握るのは労働者の賃金引き上げだとして、経団連等に「報酬の引き上げ」を要請してきた。
最低賃金をクリアしている企業に対して、賃金引き上げに関してできることは要請くらいであり、強制力を持たないのは当然である。
最低賃金は強制力を持つので、違反に対しては罰則付きで権限を行使することができる。

私が言いたいのは、最賃審議会の意見は尊重しなければならないとしても、いつでも「はいはい、ごもっとも」の態度を改めて貰いたいということである。
最低賃金制度は憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度である。従って、労働者の生計費に基いて決められるのが筋である。
最低賃金法第10条2項に基いて、厚生労働大臣又は労働局長は「再審議」を求めるくらいの断固としたイニシアティブを発揮してもらいたい。