労働者のミスによって、会社に損害を与えた場合、会社が損害賠償を求めてくる場合があります。

そのような場合に、労働者は無条件に損害賠償に応じなければならないのでしょうか?

会社で働いていれば、どんなに注意をしていても、会社に損害を与えてしまうことが起きてしまいます。

労働者のなかには、「自分のミスで会社に損害を与えたのだから」と、引け目を感じて、会社からの損害賠償請求に従う労働者もいます。また、おかしいとは思っていも、会社に異議を申し立てられずに場合もあるでしょう。

でも、損害額の全額、あるいは一定の比率を決めて、一律で賠償させることは許されません。

人間が完璧な動物ではない以上、交通事故にしろ、その他の事故にしろ、ミスを起こす意思はなくても起きてしまう場合は、多々あります。
このような場合、ミスの程度やその他の事情を勘案して、損害を弁償しなければならない場合もありますが、無条件に会社の言い分に従わなければならないということではありません。

タンクローリーを運転中に、他社のタンクローリーに追突して破損させた事件(茨城石炭商事事件)で、最高裁判所は、事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らして、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができると、判断しています。
そして、この事件の場合、請求額の4分の1を賠償額として認めています。

諸般の事情を考慮するわけですから、例えば、積載制限の2倍の過積載を無理強いされ、ブレーキの制動に支障が出て追突した場合、休みなく働かされた挙句の追突事故などについては、それらの事情も考慮されなければなりません。

損害賠償には無条件には応じない、という姿勢でがんばりましょう。

レストランなどでの皿洗い中に、誤って皿を割ってしまったなど、軽微な不注意による損害については、支払を求めることはできないとする判決もあります。