2010年4月1日から、改正労働基準法が効力を持つようになりました。

改正労働基準法のポイントは2点あります。

第一は、月60時間を超える残業時間については、割増率をこれまでの2割5分から5割に引き上げること(労働基準法第37条1項)。従業員の過半数を組織する労働組合がある場合は、その労働組合と、そのような労働組合がない場合には、従業員の過半数を代表する者との労使協定により、60時間を超える部分の残業にたいしては、休みを取得することができること(労働基準法第37条3項)。

第二は、年次有給休暇を年5日の範囲で、時間単位で取得することができるというものです(労働基準法第39条4項)。(この点は、今日のテーマではないので、紹介だけです)

ところで、どんな企業で働いていても、月60時間を超える残業時間について割増率が5割になるのかといえばそうでもないのです。

労働基準法第138条が新たに挿入され、「中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が三億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については五千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については一億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が三百人(小売業を主たる事業とする事業主については五十人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)以下の事業主をいう。)の事業については、当分の間、第三十七条第一項ただし書きの規定は、適用しない。」となっています。

労働基準法の条文をもとに、表に示すと下記のようになります。
例えば、小売業で資本金が1億円の企業であっても、従業員が50人以下であれば中小企業となります。

 

 業種  資本金の額
又は出資総額
常時使用する
労働者の数 
 小売業  5,000万円以下  50人以下
 サービス業  5,000万円以下  100人以下
 卸売業  一億円以下  100人以下
 その他  三億円以下  300人以下

中小企業に配慮するとしても、どの規模の企業で働いているかにより、労働者の権利に差が出るというのは、あまり納得できません。