2020年3月30日
沖縄県労働組合総連合

 2020年3月27日(金)と28日(土)の両日、午前10時から午後7時まで実施した「観光産業で働く仲間の労働相談」には、電話・面談・メールによる相談が15件寄せられた。そのうち13件は観光産業での新型コロナウィルス関連、2件は他の産業から新型コロナウィルス以外の相談となった。

1 相談件数

27日 6件(観光産業・新型コロナウィルス関連5件、その他の業種1件)
28日 9件(観光産業・新型コロナウィルス関連8件、その他の業種1件)
合計 15件(新型コロナウィルス関連13件、その他2件)

2 寄せられた相談概要

(相談は秘密厳守を旨として受け付けており、内容から事業所等が特定されない程度の記載となることをご了解いただきたい。)

タクシー会社を定年退職したが、コロナの影響で仕事が見つからない。(男性 求職中)
中国人。旅行会社でガイドをしている。解雇と言われた。解雇予告手当の話は聞いていない。(女性、ツァーガイド)
4月から自宅待機を命じられたが、給料はでないと言われた。(男性 宿泊業)
会社自体が休業していて、自宅待機になっているが、アルバイトの自分には休業手当が払われない。(男性 観光バス運転手)
従業員が40~50人いるが、全員解雇と言われた。(女性 宿泊業)
自宅待機中で、賃金は6割支給すると言われたがとても生活できない。(女性 観光バスガイド)
派遣労働者としてレンタカー会社で仕事をしている。レンタカー会社から休むよう言われたが、賃金補償がない。(男性 派遣労働者)
今年の1月に就職したが、現在は自宅待機中。将来展望が持てないので転職を考えている。雇用保険はもらえるのか。(女性 観光バス運転手)
大手旅行会社の委託で団体ツァーのガイドをしている。仕事が全くない。(女性 観光ガイド)
10 会社から解雇と言われた。協会けんぽから国保に切り替えるにはどうすればよいか。(男性 宿泊業)
11 今月いっぱいで解雇。この機会に辞めようと思うが給料は全額出してほしい。(女性 旅行業)
12 自宅待機になって給料は半分以下。足りない分はアルバイトしろと言うが、働ける会社を探すのは難しい。(男性 観光バス運転手)
13 外国からの観光客がメインの客層。ホテル自体が休業に入り、3月末で解雇と言われている。(男性 宿泊業)
14 会社が入札に失敗し、3月末日で解雇と言われている。(女性 ビルメン業)
15 4月から課長を解任されて平社員に。理由も示されない。これ以上働く気が起こらない。(男性 卸売業)

3、相談事例に見える問題点と沖縄県労連の見解

1 一方的な通知・通告によるものであること
 いずれの相談事例からも、解雇を含む労働条件の不利益変更が、使用者による一方的な通知・通告によって事が済まされようとしている。
 労働者の労働条件を、使用者が一方的に労働者の不利益に変更して良いと認める法律は一つもない。
使用者と労働者は対等であり、使用者は労働条件の不利益変更に関し、労働者の同意を得ることが必要である(労働基準法第2条、労働契約法第3条及び第8条、第9条。なお、労働契約法第10条は、労働者の個別同意を得ることなく、就業規則の変更によって不利益変更を可能としているが、それには厳しい制約を課しており、決して一方的にできるものではない。)。
2 法令無視、または無知が甚だしい
 近代市民社会は、契約とその履行を旨とする社会である。労働契約も原則としていかなる場合も遵守されなければならない。しかしながら、諸般の経済的、企業の個別的事情により、事業そのものの休止やそれに伴う労働者の解雇、休業がありえることも否定できないが、このような事態は労働者に責任がないのは自明である。
そのため、整理解雇に対しては4要件(①解雇しなければならない経営上の理由があること、②解雇を回避する努力を尽くすこと、③解雇対象者の人選基準が合理的であること、④労働組合や解雇対象者と誠実に協議を尽くすこと)を、また民法第536条第2項で賃金の全額請求権を認め、民法の規定に該当しない場合であっても、労働基準法第26条で「平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならない」と定めている。
 労働基準法は最低基準であり、決して最高基準ではない(労働基準法第1条)。ところが、使用者は「60%払うのだから文句はなかろう」と言わんばかりの対応をしているのが実情である。これは“以上”を無視し、最低基準を上回るよう努力しなければならない(労働基準法第1条)との努力義務を否定するものと言わざるを得ない。
労働者には契約どおりに賃金を支払え、最低でも60%以上を支払えと要求する権利が認められており、その結果は誠実な交渉の結果を待つことになる。
解雇事案に関しては、新型コロナウィルスによる業績悪化による解雇は、整理解雇に該当し、整理解雇の4要員をすべてクリアすることが求められるが、使用者はこれを一切無視している。
解雇予告手当を支払わなければならない事案においても、これを支払っていない。
3 沖縄県労連は、使用者に法令遵守を強く求める。同時に、使用者に法令を遵守させる労働者の力が成長することを切に願い、訴える。
 沖縄県労連は、新型コロナウィルスの感染が、多くの企業の経営悪化を引き起こしている大きな要因として作用していることを否定しない。しかし、どのような状況下においても法は遵守されなければならない。むしろ、そのような時こそ、法に基づき、労働者への丁寧な説明と誠実な対応が求められなければならない。
しかるに、使用者による労働者の労働条件引き下げは、前述したとおり、まさに“無法状態”と言っても過言ではない。
沖縄県労連は、使用者が“一方的に通知して事足れり”とする姿勢を即刻改め、法令を遵守するよう強く求める。
 同時に、働く仲間に対して、正しい知識を身につけ、使用者に法令を遵守させる労働者の力を強めていくことを訴える。
労働者は、憲法28条で保障された三つの宝、団結権(労働組合に加入したり、労働組合をつくる権利)、団体交渉権(労働組合として会社と交渉する権利)、団体行動権(労働組合としてストライキや集会、宣伝行動などを行う権利)を有している。この大事な宝物を、宝の持ち腐れにしてはいけない。
 労働者に大きな苦難が押し寄せている今こそ、宝物を磨いて光らせよう。自分自身と家族、仲間の生活を守るとともに、労働者全体の権利を向上させるため、労働組合に加入し、働く仲間の絆を強めよう。
沖縄県労連は、全力で働く仲間を応援することを約束する。

一人はみんなのために、みんなは一人のために