テレビ番組などで、「あの人は今」といった番組をやることがある。
人は誰でも、自分の人生に関わった人で、心の片隅に存在している人がいるのではないだろうか。
10年くらい前に、県労連を訪ねてきた若い女性がいた。
ある企業の幹部にスカウトされて転職した。
ところが、その幹部からパワハラをうけ、うつ病を発症してしまった。
労働組合はあるが、何もしてくれず、産業医に相談しても幹部職員など筒抜けになっている。
耐えきれずに退職せざるを得なかったが、許せない。
という相談だった。
うつ病を患っている若い女性に、どのように対応するべきか迷っていた。
何度か話し合いを重ねて、労災申請をすすめることにした。
それは、彼女の希望でもあり、必要な書類を預けていった。
私は、診断書や手帳をはじめ、かなりの資料を預かった。
ところが、その後、彼女と連絡がつかない状態が続いた。
携帯電話の番号に電話しても、繋がることはなく、折返しの連絡もなかった。
うつ病ということを考慮し、あまり頻繁に電話しても負担に感じるかもしれないと考えたこともあるが、体調が上向きになったら連絡が来るだろうとの思いもあり、いつしか連絡をとることもなくなった。
預かった資料は書類棚の片隅に置いたままになっていた。
もう使う機会はないだろうと思いながら、処分するには後ろめたいものを感じ、今日まできてしまった。
区切りをつけるために、預かった書類の処分に踏み切った。
スカウトに応じなければ、あれほどの苦しみに遭遇することもなかったろうに、自分の能力を見込んでスタウトしたであろう当の本人にパワハラの嵐を受けるなんて思いもしなかったろう。
あの人は、あれからどんな人生を歩んだろうか?