労働組合には様々な相談事が寄せられます。

これらの相談事のなかには、知識を仕入れることができればとりあえずOKという場合もありますが、問題を解決するためにがんばる気持ちを持っている方に対しては、組合に加入してもらって一緒にがんばることになります。

その場合、考える一つの、重要な基準に、“この問題を裁判にかければ勝てるだろうか?” があります。

主張が正しいと思われる場合であっても、その主張を裏付ける証拠がないと裁判に勝つには容易ではありません。

そのため、必要と思われる材料を集めることが必要です。

まず、労働者自身で集められるだけの材料をあつめます。

就業規則や賃金規則、労働(雇用)契約書、タイムカード、賃金明細などですが、事案によって業務日報や警備日誌、会社の定款などが必要になることもあります。

入手できた材料を検討し、団体交渉となります。

これも事案によりけりですが、団交に先行して公的機関のあっせんを活用することもあります。

それで解決すれば良いのですが、解決できなくても一定の材料を入手できる場合があるからです。

紹介するのは、お恥ずかしい限りですが、肝に銘じている失敗例です。

ある労働者が、「会社の車に傷をつけたから解雇と言われた。会社は傷つける場面がドライブレコーダーにあると言うが、自分は身に覚えがない。ドライブレコーダーを見せてくれと頼んでも見せてくれない」と相談してきました。

話を聞き、解雇撤回で団体交渉を申し入れたのですが、これが大失敗の元でした。

解雇事件の場合、「せめて3日間は会社に行って働かせてくれるようお願いする」ようアドアビスするのですが、その時は自分でもどうしてすぐに団交申入を急いだのかよく分かりませんが、団交することになりました。

会社の言い分は、「3日間の出勤停止と言っただけで、解雇とは行っていない。3日過ぎても一向に出勤しないので自主退職扱いにした。ドラレコのSDカードは2日間保管するが、現在は上書き使用されている」というものです。

この状況で裁判に持っていって勝てるか?

と考えるとかなり厳しいことは明らかです。

団交の前に、労働者が会社に行って働かせてくれるよう頼んだ場合は、少なくとも会社が解雇と言ったのか、出勤停止と言ったのか、はっきりさせることができます。

労働者が「解雇と言われたが、急に仕事がなくなると生活に困るので、解雇はやめて働かせてください。」と頼んだ場合、会社の答えは「会社が解雇と言ったら解雇だ。撤回はしないからもう会社にくるな!」というのが大体のところです。

こうしたやりとりを録音しておけば、解雇された前提において解雇理由が合理的なものかどうかを団交で問いただすことができたのです。

翁長知事に対して「直ちに埋立て承認撤回を」との意見が新聞紙面等でも見られます。

「工事が進んで取り返しがつかなくなる前に撤回を」との気持ちは、よく分かります。

が、承認取り消しの際に経験したように、承認撤回は裁判闘争の幕開けです。

その際には、裁判闘争に耐えうるしっかりした「貯金」を翁長知事・沖縄県が持っているかどうかが重要になります。

“取り返しがつかない前”に、“しっかりした「貯金」をもとに”、承認の撤回をする。

その微妙なバランスを見極めながら、翁長知事は撤回時期を模索していると思われます。

去る3月25日に、キャンプシュワブゲート前で行われた「違法な埋立工事の即時中止・辺野古新基地建設断念を求める県民集会」で、翁長知事は「(国は)岩礁破砕許可を無視して通り過ぎようとしている。本当はいろんな申請があるのを通り過ぎようとしているのが、私の胸の中に一つ一つ貯金として入っているので、この貯金を基にあらゆる手法をもって撤回を、力強く、必ずやる」と述べています。

私が心配しているのは、アメリカ発の元米政府高官のため息(翁長知事は辺野古で有効策を打たないだろう)が県民に拡散し、翁長知事への不信感を生み出し、県民分断につながらないかという点に尽きます。

安倍政権があの手この手で県民分断策を弄してくるなかで、県民のもっている力は結束しかないのですから、持っている力をいかに大きく太くするかが、今こそ求められていると考えます。