一日9時間働いても、その週のうちのどこかで1時間をカットして7時間とし、週40時間以内の労働時間となっているので残業代は出さないという会社があります。

変形労働時間制の定めがない会社では、このような取扱いは違法となります。

労働基準法第32条は、1項で「週40時間を超えて労働させてはならない」こと、第2項では「一日について8時間を超えて労働させてはならない」ことを定めています。

第1項も守らなければならないし、第2項も守らなければならないのであって、第1項を守れば第2項は守らなくても良いということにはなりません。

この事例では、二つの問題が発生します。

第一の問題は、9時間労働した日の一時間は残業時間であり、時間外割増賃金が発生することになります。

第二の問題は、本来8時間が所定労働時間となっているのに、1時間カットされて7時間しか働けなかった日の一時間をどのように考えるかという問題です。使用者は、この1時間についても賃金を支払わなければなりません。

カットされた1時間について、労働者には賃金請求権が認められています。

ここで改めて記載することはやりませんが、会社都合の休業は賃金を全額請求できますの記事を参照してください。

参照記事では、一日まるまる休業させられた場合の例となっていますが、「債務を履行できなくなったとき」というのは、それが一日であれ、1時間であれ、考え方に違いはありません。

このような取扱いを受けている方は、「残業代とカットされた一時間分の賃金を払ってほしい」と、請求しましょう。