解雇された労働者から、「こんな会社ではもう働けないので、これまでもらってこなかった残業手当を請求したい」と相談されることがあります。

労働債権の時効は2年ですので、その労働者が2年以上働いていたのであれば、すでに時効によって切り捨てられる部分があります。

そして、1か月が経過するごとに、2年前の月に払われなければならなかった残業手当が、時効によって消滅していくことになります。
ぼやぼやしていると、請求できる金額がどんどん少なくなっていくのです。

そのような場合には、時効を中断させることを急がなければなりません。
そこで活用するのが、内容証明郵便による請求です。

民法第153条は(催告)という下記の条文になっています。
催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

普通の一般人から見れば逆説的な条文ですが、この条文の趣旨は、催告してから6箇月以内に裁判上の上記の手続きを行えば、時効を中断させることができる、ということになります。

催告とは、債権者(残業手当請求であれば労働者)が債務者(会社)に対して、債務の履行(残業手当の支払)を求める行為で、口頭でも普通郵便でも良いことになっています。
しかし、口頭では言った言わないの水掛け論になる場合もありますし、普通の郵便だと郵便局の誤配達もあるかも知れませんので、確実に相手に配達されたかどうかはわかりません。
また、実際は届いていても、会社が「届いていない、知らない」とシラを切ればこれも水掛け論の世界です。
裁判に訴える場合には、証拠が物を言いますので、内容証明郵便を使うのが良いでしょう。

時効が問題となる場合には、内容証明郵便で「この間の残業手当として●●●万円を、何時までに、どんな方法で支払え」と請求しておきます。
それから会社側と交渉し、解決すればそれで良いし、6箇月以内に解決しなければ、裁判に訴えることになります。

ちなみに、裁判に訴える場合は、付加金も請求することができます。