昨今の事態は金融危機にとどまらず、深刻な経済危機に落ち込んでいます。トヨタやソニーなど大規模な人員削減を発表したり、派遣労働者を契約期間途中で解雇したり、雇用問題もいっそう深刻の度合を深めています。

建設業では耐震偽装問題をきっかけに、建築基準の見直しがなされたことをきっかけに、建築確認に時間がかかったり、そのうえ沖縄では談合問題の賠償金問題も絡んで、特Aクラスの業者が倒産したり、廃業したりと、建設産業は大変のようです。

建設産業は、重層下請構造になっていて、6次下請けや7次下請けまで存在するような業界です。
そのような業界ですので、中間の下請け業者が倒産したりするなどの理由によって、その下に連なる下請け業者に工事代金が支払われない場合が往々にして発生します。

通常の賃金未払い事件にしてしまうと、労働基準監督署は賃金支払いの義務を負う雇用主に対して指導することになります。工事代金が未払いであっても労働者に賃金を支払うのに十分な体力があるのであれば、それでも良いのですが、下請け企業は中小・零細業者が多く、工事代金がもらえなければ賃金を支払うこともできない業者が多く存在します。

こんな時に活用できるのが、建設業法第41条2項です。

 


そこには、「特定建設業者が発注者から直接請け負つた建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工のために使用している労働者に対する賃金の支払を遅滞した場合において、必要があると認めるときは、当該特定建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該特定建設業者に対して、支払を遅滞した賃金のうち当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払することその他の適切な措置を講ずることを勧告することができる。」と定められています。

そもそも、発注者から工事を請け負った建設業者(元請業者と呼ぶことにします)は、その工事のすべてに責任を負うことになります。一次下請け業者に工事代金が支払ったからそれで終わりということにはならず、末端の下請け業者まで工事代金が流れているのか、監視する義務を負っています。
そのため、特定建設業者に許可を与えて国土交通大臣や都道府県知事は、「建設工事の適正な施行を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告」(第41条1項)できることになっています。

もっとも、労働組合の運動としては、下請け業者で賃金の未払いが発生した場合には、元請企業に立替払いを含めた解決を要求し、「二重払いになる」などの口実で立替払いを頑として拒否した場合に、大臣又は知事に対して勧告を出すよう求めることが通常です。