会社で働いていると、いろんなことが起きてきます。
時には社長と口論し、お互いに激高して「お前なんか辞めてしまえ」「ああ、辞めてやる。こんな会社で働けるか」となってしまう場合だって、時には起きてしまいます。

この場合の、労働者の「辞める」発言が、有効なのでしょうか。それとも、無効なのでしょうか。

ついカッとなって「辞める」と口走ってしまい、翌日社長に「昨日の発言は本心ではない」趣旨を伝えても、社長が根に持って「お前は俺に反抗したけしからん奴だ。昨日辞めると言ったのだから、今日からはうちの社員じゃない」と、頑なな姿勢をとった時にはどうなるのでしょう。

民法93条には心裡留保という条項があり、「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。」となっています。

平たく言えば、労働者が辞める意思はないのに、辞めると言ってしまった以上、それは有効であるが、社長が労働者に辞める意思がないのを知っていたか、知ることができたときは、効力はない、ということかと理解できます。

したがって、裁判では口論の末の発言は心裡留保と認められる可能性もありますが、すべてのケースについて認められるかどうかは、保障の限りではありません。
労働者の日常の言動や、口論の後の対応などによっても、判断は分かれると思われます。
くれぐれも、カッとならないことが、この種のトラブルを防ぐことになります。