「年末調整がなかったが、おかしいのではないか」との話を耳にすることがあります。

労働条件が劣悪な職場で労働組合をつくる準備過程で、会社に対する不満・要求などを出し合っていると時々そんな話題も出てきます。

意図的に労働者に還付しない悪質な場合は論外として、相談にこられた方のなかには、扶養控除申告の提出を忘れてしまっている場合もあります。

年末調整は、扶養控除申告を出すことが前提となっていますので、忘れないように必ず提出することが必要です。

労働者は、毎月の給料から所得税、住民税を控除(天引き)されています。

しかし、毎月天引きされる税金の1年間(1月から12月)の合計が、本来納めるべき年間の税額と一致するかといえば、必ずしも一致しません。

年の途中で、給料が上がったり下がったりすること。

扶養親族が増えたり、あるいは減ったりすること。

生活に変化が起きて、勤労学生控除や寡婦控除の対象になったりする場合があること。

等々によって、税額に変動があるからです。

これらの変動を調整して正しい税額を計算し、取り過ぎた時は還付し、不足の時は補うことを年末の時期に行うことになります。これが、年末調整です。

この年末調整は、扶養控除申告を提出している人について行うことになっています。

扶養親族控除の申告は、原則として1年のうち給与支払いを最初に受ける時(普通は1月の給料となります)までに提出することになります。企業の実務としては、給料から社会保険料を差し引いた額と扶養親族の人数に基づいて源泉徴収しますから、年の最初の給料支払いに合わせて計算する方が合理的なのです。

年の途中で扶養親族等に異動があった場合には、その都度申告することになります。

このような大事な扶養申告を忘れてしまった場合にはどうなるのでしょうか。

ここで「原則として」を思い出すことが必要です。

原則があれば、例外があるのが世の常です。

事業主は、申告していない人や異動申告していない人についても、年末調整を行う時までに申告があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことになっています。

また、これらの申告を忘れていると思われる人については、早急に提出するよう指導し、確認しなければなりません。

職場の人間関係がうまくいっている場合は何でもないことなのですが、ギスギスしている時などは「出してと申告用紙を渡したのに、出さなかったあんたが悪いんでしょ」と突き放されたりすることもありますので、扶養控除申告は忘れずにしっかり提出しておきましょう。