解雇については、労働契約法第16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められている。

懲戒処分をする場合にも、同法第15条で、「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めている。

「客観的で合理的な理由」かつ「社会通念上相当と認められる理由」の要件が不可欠になるのだが、これらの理由を判断する過程において、適正手続きが重視されなければならない。

憲法第31条は、 「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない。」としている。これは、刑事事件に関する規定ではあるが、企業における懲戒処分も、“一種の刑罰”と言えるのだから、この条文を踏まえる必要があると考える。

解雇や懲戒処分に関する相談では、「ある日突然解雇された。それも、普段は就業規則を見たこともないのに、解雇の時には就業規則第○○上によりと書かれている」、「納得できない理由で懲戒された。事情聴取を受けたこともない」というものが多い。

沖縄県労連は、去る8月11日、沖縄県社会福祉協議会のパワハラ、不当な雇止めを受けたとする女性の問題に関して、所管庁である玉城デニー沖縄県知事に、指導・監督を要請した。

雇止めの理由の一つとして、障害者の就職支援の一環として実施している見学ツァーに関して、「見学ツァーに参加していた障害者について終了後、職員に『あんな身体で働く場所があるわけない』と言った。」がある。

もちろん、本人は否定している。

この理由自体、県社協から雇止めを告げられ時に言われたことではなく、うまんちゅユニオンとの交渉の中で出てきたものである。

この問題を適正手続きという面から考えるとどうだろうか。

雇止めの理由として挙げるくらいだから、本当に女性がそのような発言をしたのであれば、見過ごしてはいけない由々しき発言である。

しかし、女性から直接聞いたとする職員は、「そんな事言ったらダメだよ」と注意もしていない。その職員から報告を受けたであろう県社協の幹部職員も、注意や指導教育はおろか、女性に対して事実確認さえしていない。

そして、雇用契約の更新時に突然問題視され、雇止めの理由とされるのである。

少なくとも、県社協の幹部職員は、職員から報告を受けた段階で事実確認を行うべきであったし、場合によっては、女性の発言を聞いたとする職員も交えて話し合うことが求められる。

そうして、発言が事実であったとすれば、その時点で何らかの措置をとり、指導と教育を行うことが必要であった。

適正手続きにもとる処分が許されるなら、「あなたが○○と言ったのを聞いた職員がいる」、「あなたが××行為を行ったのを見た職員がいる」との理由をあげて、いくらでも労働者を解雇し、懲戒することが可能となる。

このような職場では、気に入らない人を職場から排除するためには、“幹部職員にこっそり讒言すれば、あの人の顔を見なくて済む”との風土さえ生み出しかねないのである。

これまで、数え切れないくらい企業の就業規則を見てきたが、懲戒の種類、懲戒の事由を列記した就業規則が殆どで、懲戒の手続きまできちんと書いてある就業規則は「片手でさえ余る」。

企業における解雇・懲戒は、その人の人生を狂わす場合があることを、懲戒権者は肝に銘じ、手続きの透明性の確保にも注意を向けていただきたい、と切に願う。

解雇や懲戒でお悩みの方は、全労連のフリーダイヤル 0120ー378-060 にダイヤルし、ご相談されるようお薦めします。全国どこからダイヤルしても、お近くの全労連加盟組合が対応してくれます。