労働審判制度の専門性とは何を指すのででしょうか。

労働審判は、職業裁判官(審判官と言います)1人と、経営者団体と労働組合が推薦する審判員2人、この三人が合議で決めることになっています。

審判員は、経営者団体や労働組合が推薦し、最高裁判所が任命することになっています。

だからといって、審判員が経営者や労働者に肩入れするのではありません。
経営者の団体から推薦されたから企業の味方するとか、労働組合から推薦されたから労働者の肩を持つとかではなく、あくまでも中立・公正を旨として、審理に当たります。

職業裁判官なら、法律に詳しいだろうから安心だが、裁判官の資格もない民間人が担当して、大丈夫だろうか?

それのどこが、専門性なの?

心配される方もいらっしゃるかも知れませんね。

確かに、審判員は法律を専門にしている訳ではありません。
しかし、企業の中で労使間の諸問題について、経験を積んできた方が任命されます。
その専門的な知識と経験を活かしていくことが期待されているのです。

裁判官の法律知識と、審判員の現実社会の中での経験、この両面をうまく融合させ、活用することが労働審判制度の専門性と言われています。

労使関係は、つまるところ人と人との関係ですから、法律一辺倒で片付けるより、柔軟な対応が求められる場合もありますので、かなり有効に作用していると思われます。

労働審判制度 第2版 ―基本趣旨と法令解説―は、労働審判制度の誕生に尽力した学者、裁判官などの皆さんが、労働審判制度の発足にいたる背景、議論の模様などを紹介するとともに、労働審判法の逐条解説を行ったものです。

文章も比較的平易に書かれていますので、勉強するには適切な教材だと思います。