8月23日の新聞を開いて衝撃を受けた人は多いと思う。
那覇市のオフィス用品・書籍販売の「安木屋」社長と店長が、労働基準監督署に逮捕されたからだ。
労働基準監督署が労基法違反で逮捕するなど、滅多にあるものではない。
残念ながらそれを伝える記事は手元に残っていないが、その後の紙面から紹介する。
【2017年8月25日 沖縄タイムスから】
証拠隠滅 共謀の恐れ
企業理念の筆頭に「全従業員の豊かさ追求」を掲げていた「安木屋」の社長らが、労働基準法違反の疑いで送検された。
同社の不払い額賃金の約580万円は「県内のかこの摘発事例と比べ金額的には大きくない」額だった。なぜ異例ともいえる逮捕に至ったのか。
24日にあった那覇労働基準監督署の風間勝署長らの記者会見では、その狙いに質問が集中した。
安木屋では、ICカードで出退勤を記録し、残業代は自己申告制をとっていた。
残業代不払いの疑惑が浮上したきっかけは、カード上の打刻と自己申告の「大幅な乖離」。
定時の午後7時を超え店舗にいた打刻記録が残る一方で、残業が申告されていない勤務日が複数あった。
社長や店長が従業員に申告させなかった可能性も含めて調べを進めているという。
通常なら「任意捜査」で対応する事案。
だが同社は違反発覚の2015年2月以降、5回以上の行政指導に応じず、その理由を説明することもなかった。
風間署長は「任意捜査を進める中で、社長らに証拠隠滅や共謀の恐れがあるような抵抗もあり、逮捕に踏み切ったと説明した。
悪質な事例 厳しい対処を
同じ紙面で、金高望弁護士は、
安木屋のケースは、度重なる指導に従わない悪質性が労基署に非常に重大だと判断されたとみられ、刑事罰を認めたことも理解できる。
全国的に労働関係法令違反の極めて悪質なケースが野放しになっている。
労基署の監督官は特別司法警察職員の権限を行使し、厳しく対処していく必要がある。
一方、逮捕は身体の拘束で最大の人権制約になるため、慎重な判断が必要になる。
調べを進める中で証拠隠滅が疑われる行為があった可能性があるが、刑事罰と身体拘束の必要性は別に考えなくてはいけない
とコメントしている。
【同日(2017年8月25日)付 沖縄タイムス】
安木屋社長と店長送検 三六協定未締結 賃金不払い容疑
那覇労働基準監督署は24日、違法な時間外労働と時間外労働にかかる割増賃金の不払いがあったとして、株式会社「安木屋」の社長と店長を那覇地検に送致した。
法人としての同社も同法違反容疑で地検に書類送致した。
安木屋は2015年4月26日から約2年間、労働者に時間外労働させるために必要な労使協定(三六協定)を結ばず、法定の労働時間を超えて従業員を働かせた。
1人あたりの最高額は90万円だった。
沖縄労働局によると、那覇労基署管内で労働関係法令違反により逮捕、身柄を送検された事例は初で、県内では記録が確認できる1989年以来初めてだという。