米軍基地で働く労働者が、上司を「ウチクルス」と発言したことが、「殺すまたは深刻な身体的危害を与えると脅迫した」とされて解雇され、解雇を承認した国を相手に解雇無効を争っていた裁判で、那覇地裁は4月14日、解雇無効と賃金支払を命じる判決を出しました。

裁判で、労働者は「懲らしめてやる」との意味で「ウチクルス」と発言したと主張。

裁判所は「上司に対する不満等を暴力的な言葉を使用して表現したにとどまり、解雇理由にあたらない」と判断した。(4月15日付の沖縄タイムス)

 

沖縄の方言には、「ウチクルス」のほか、タックルセ―、シナサリンドーなど、判決で言う「暴力的な言葉」がある。

しかし、これらは表現は、共通語の「殺す」とは意味合いが異なっている。

裁判で労働者が主張するように「懲らしめる」との色合いが強い言葉なのである。

沖縄方言の特徴を理解しないアメリカ人や防衛庁の他府県人が「殺してやる」と理解したか、意図的に曲解したかわからないが、裁判での争点となったようである。

沖縄が米軍の全面占領されていた時代、沖縄の青年4人が米軍人に対する暴行(殺人?)したとの容疑で裁判にかけられた。

その裁判でも沖縄の青年が発した「タックルセ―」が、「殺す」との意味で使われたか、「懲らしめる」との趣旨であったかが、重要な争点となった。

「ウチクルス」解雇事件で、1975年頃に読んだ本を思い出した。

今では暴行事件だったか、殺人事件だったか、おぼろげではあるが、陪審員として裁判の審理を体験した伊佐千尋氏が、逆転―アメリカ支配下・沖縄の陪審裁判 (岩波現代文庫) という本にまとめてある。