甲府地方裁判所は、1月12日、同居する親族が労働基準法上の労働者にあたるかどうかが争われている裁判で、「労働者にあたる」との判断を示しました。

この裁判は、父親が経営する左官業の会社で働いている息子が、2006年9月、工事現場で2階ベランダから落下して腰椎骨折、脊椎損傷の大けがを負ったため、労災の適用を申請したが、労働基準監督署は息子が両親と同居していることから、「労働基準法上の労働者ではない」として、不支給としたため、不支給処分の取り消しを求めて提訴していたものです。

この裁判のポイントは次の点にあります。

労働基準法第116条2項には、「この法律は、同居する親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」と定められています。

労働基準監督署は、この規定をとらえて「同居の親族は事業主と別居及び生計を一にするもので、原則として労基法上の労働者に該当しない」との立場から、労働者と認めませんでした。

労働者側は、「別居している兄も一緒に働いており、同居以外の使用人がいれば除外規定は適用されない」と、不支給処分の取り消しを求めて争ってきました。

それに対して、裁判所は「同居の親族のみを使用する事業を除外する規定であり、同居の親族を除外する規定でないことは言うまでもなく、さらに、同居の親族の労務の実態はさまざまであるから、実質的に使用従属性の有無を判断するのが相当であり、原則として労働者性を否定するという被告の解釈は適用できない」と、国の主張を退けています。

また、昭和54年4月2日付の通達・基発第153号で示されている二つの要件を満たしていれば、同居親族も労働者である」と判断しています。

この労基法の条文は、同居親族のみを使用する事業を適用除外とするもので、「同居する親族を除外する」ものではないことを明白に示した判決です。