10月31日付の琉球新報は、安倍政権が名護市辺野古への新基地建設に向けた埋め立て本体工事に着手したことについて、各地の新聞社説を紹介している。

本文の紹介が東京新聞、朝日新聞、中國新聞、愛媛新聞、北國新聞の5紙、見出しのみ紹介が19紙となっている。

大方は、沖縄県民の民意を無視して強行すべきでない、との論調である。

本文が紹介されている5紙の見出しは、東京新聞「民主主義に背く強行だ」、朝日新聞「埋め立て強行は許されぬ」、中國新聞「『強権』政治の行く先は」、愛媛新聞「力ずくの既成事実化許されない」、北國新聞「やむを得ない国の代執行」となっている。

それら5紙のうちで北國新聞の社説は見出しだけでも察しがつくというものだが、まるで安倍政権の広報紙のようである。

「一番の問題である普天間の危険性除去して、米国との信頼関係に基づく国の安全保障政策を遂行するための、やむを得ない判断」だと、北國新聞は主張する。そして、その論拠として挙げているのは、すべて政府の言い分である。

仲井眞前知事が行った埋め立て承認に、政府に瑕疵はなく、翁長知事の承認取り消しは違法。
普天間飛行場の危険性を継続させ、米国との信頼関係に悪影響を与えるなど「著しく公益を害する」
行政の継続性の面でも、翁長知事の取り消し処分には無理がある、等々。

そして、「残念ながら現状では、法令に基づいて粛々と物事を進めるほかない。」と結論する。

そこには、沖縄県民がなぜ辺野古への米軍基地建設に反対するのか、基地による被害も歴史的背景もすっぽりと抜け落ちている。そこを書けば「やむを得ない」などとは言えないだろうから、意図的に書いていないのではないかと勘ぐりたくもなってくる。

「法令に基づいて粛々と」などと書いているが、沖縄防衛局が公権力を最大限に振り回して強圧的に振る舞いながら、他方では「私人」として行政不服審査法を用いている点についても触れていない。

多くの行政法学者が「不公正」「不適法」と指摘しているのに・・・である。

それにしても、と考えさせられることがある。

北国新聞社として、それなりの考えがあって「やむを得ない」というのであれば、そういう考えもあると思うのだが、安倍政権の言い分を並べた上で「やむを得ない」では、権力を監視する役割を果たすべきマスコミといえるのだろうか?