「我社は変形時間労働制を採用しているので、来月は毎日10時間働くこと」などと、突然社長が言い出す場合があります。
あるいは、「休日は年間カレンダーによる」として、年末年始の休みをこれまで12月29日から1月3日までの6連続休であったものを、1月8日までの11連続休にして、増えた分は夏場の休日を削ったりする場合もあったりします。
その表れ方は企業により様々ですが、要するに変形労働時間制を採用していれば、社長が勝手に労働時間や休日を変更できるのか、というのが問題です。
1,労働時間の原則と変形労働時間制
労働時間は労働基準法第32条で「週に40時間、一日8時間」と決められています。これが原則であり、三六協定や変形労働時間制などに関する労使協定がない限り、その時間を超えて労働者を働かすことはできません。「週40時間、一日8時間」を超えて働かせてしまうと、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となります。
ところが、企業活動は必ずしも一定しているわけではありません。
例えば、沖縄の製糖業は、冬場の製糖期にはフル操業しますが、製糖期が終われば製糖期程の忙しさはありません。
あるいは又請求書を発送する月末が忙しいとか、毎月の試算表を作成する月はじめは忙しいなど、同一企業の中でも部署によって多忙な時期があったりします。
このように、業務に繁閑が生じます。
そのため、企業としては「いそがし時は多く働かせ、それ程多忙でない時は少なく働かせたい」と考えます。
そして、それが実現できれば残業代の節約にもなるのですから、一石二鳥です。
こうして、一定の期間を平均して週40時間になるのであれば、週40時間を超え、一日8時間を超えて働かせても合法
とする変形労働時間制が出現することになります。
この変形労働時間制には、1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制があります。
【1年単位の変形労働時間制】
労働基準法第32条の4に、1年単位の変形労働時間制に関する定めが置かれています。
1年単位と言っても、必ずしも「1年」としなければならない訳ではないので、「1か月以上1年以内」を期間とする変形労働時間制となっています。
この1年単位の変形労働時間制を導入するには、下記のような条件を備えなければなりません。
1,変形労働時間制を導入するには、過半数労働組合があればその労働組合、過半数労働組合がない場合には、過半数代表者との書面による協定が必要です。
2,書面による協定には次の事項を取り決めなければなりません。
① 労働者の範囲
② 対象期間(3か月以内とする場合と、3か月を超えて定める場合に区分されます。)
③ 特定期間(対象期間中の特に業務が多忙な期間)
④ 対象期間における労働日、労働日ごとの労働時間
3,変形労働時間制を採用する場合には、労働基準法施行規則第12条の4により、労働時間に一定の制約が課せられます。
① 1日の労働時間の上限10時間、1週の上限52時間
② 所定労働日の上限280日
③ 連続労働日数の上限6日
(注)1年単位の変形労働時間制は、対象期間が3か月以内のもとの、3か月を超えるものとは、若干の違いがあります。
対象期間が3か月を超える場合は、上記の諸点に加えて、「週の労働時間が48時間を超える週が連続する場合、連続する週は3週以下」などの条件が加わります。
【1か月単位の変形労働時間制】
工事中ーー追って追加
【1週間単位の変形労働時間制】
工事中ーー追って追加