今年(2013年)2月28日、福岡高裁が雇用保険法上の労働者についての判決を出しました。(平成24年(行コ)第18号雇用保険の被保険者となったことの確認請求却下処分取消請求控訴事件)

労組法上や労基法上の労働者性については、INAXメンテナンスなどいくつかの判例がありますが、雇用保険法上の労働者性についてはあまり聞かない(私が知らないだけかも知れませんが)ので紹介することにします。

なお、提訴した労働者ら3名は、建交労の組合員です。

<事案の概要>

生命保険会社の専門職スタッフとして、生命保険等の契約成立又は保険金・給付金等の支払いに係る確認業務に従事していた労働者らが、大阪西公共職業安定所長に対し、雇用保険法第8条にもとづき、雇用保険の被保険者となったことの確認を求めたところ、安定所長は確認請求を却下した。

労働者らは安定所長の処分取り消しを認めて、福岡地裁に提訴したが、福岡地裁が労働者らの訴えを棄却したため、控訴して争った事案に対する判決である。

<就労形態の概要>

労働者らは、会社との間で1年を契約期間とする「委任契約書」を締結している。

会社からメールや宅配便で送られてくる確認案件に関する資料を受け取り、それに基づいて業務を行なっている。

業務遂行に必要なパソコン、デジカメ、プリンターなどは会社から貸与され、インクと用紙も会社から支給されている。

労働者らは出社する義務はなく、労働時間や休日などについても特段指定はなかった。

会社から労働者らに支払われる報酬はいくつかあるが、基本的な報酬である支給金は、確認業務の種類、内容、確認報告書の品質等でポイント化され、ポイント単価1500円を乗じて算出されている。

<裁判所の判断>

◯基本的な判断枠組み

1 雇用保険法は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うこと等により、労働者の生活及び雇用の安定を図ることその他労働者の福祉の増進を目的とする。

2 雇用保険法における労働者に該当するということが言えるためには、事業主に対し、労務を提供し、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、その対償の支払を受ける関係にあることを必要とするということができるが、そのような関係が存するというためには、事業主と労働者の間に、民法623条による雇用契約が締結されている場合にとどまらず、仕事の依頼や業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮命令の有無、場所的・時間的高速性の有無、代替性の有無、報酬の性格、当該労務提供者の事業者性の有無、専属性の程度、その他の事情をも総合考慮して、雇用保険法の趣旨に照らして、同法上の保護を与えるに相当な関係が存すれば足りると解するのが相当である。

◯判断した要素

1 労務の従属性、労務対償性について

2 仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の事由について

3 業務遂行上の指揮命令の有無について

4 労務提供の場所的・時間的拘束性について

5 報酬の性格について

6 専属性の程度について

7 その他の事情について

◯結論

労働者らは、会社の組織に組み込まれた状態にあって会社に労務を提供し、会社との間に雇用関係と同視できる従属関係があり、会社から受ける対償としての報酬により生計を維持している者であり、会社との上記関係が失われた場合及びその継続が困難となる事由が生じた場合等に、雇用保険法上の保護を受けることが相当であることについては認められる。

したがって、労働者らは、会社との間に雇用関係と同視できる従属関係にあり、契約に従った労務を会社に提供したことの対価によって生計を維持するものであるから、雇用保険法上の労働者である。よって、そうでないとした原審は判断を誤ったもので違法であることは明らかである。

として、原判決を取り消し、「大阪西公共職業安定所長が、控訴人らに対して平成18年5月19日付でした雇用保険の被保険者となったことの確認請求を却下する処分を取り消す。」(主文)とした。

 

最近、補助弁護士に資格を認めた裁判例も出ているが、この判決の限りでは、雇用保険法上の労働者性を判断する要素は、基本的には労働組合法上の労働者性を判断した最高裁判決を踏襲しているように見えます。