沖縄の人間として、このような記事を書かなければならないことは、本当に断腸の思いですが、注意を喚起することも労働組合の役割であると考え、ブログに掲載することにします。

他府県からネットでの募集広告を見て、沖縄にやってくる若者(だけではないのですが)たちがいます。

「沖縄の青い海で好きなことをしながら、いろいろな資格が取得できる」などと勧誘し、研修生を募集するという手口です。

研修生ですから、賃金(給料)を払う必要はなし、研修手当名目で月5万円なり、7万円なりを支払う。

住居は「研修生」が業者の紹介でアパートを借りることもありますし、業者の寮(あるいは住み込み)の場合もあります。

研修生は、「将来独立して事業を起こす場合に備えて」などと言われて、朝早くから夜遅くまで働かされているケースが多いのです。

それでも、無事に働くことができて、穏便に辞めることができればまだしも、トラブルになったりします。

どのようなトラブルか、これまで沖縄県労連に寄せられた相談事例を紹介しましょう。

警察にも訴えられたケース

専門学校を卒業したばかりの関東出身の若者Aさんは、ダイビング業者のもとで研修手当5万円の支払いを受け、住居は自分でアパートを借りて住んでいました。

5万円ではとても生活できないので、親に仕送りして貰いながら、好きなことの資格がとれるなら、と我慢して頑張っていましたが、資格を取得するための研修は一切なく、朝早くから夜遅くまで働き詰めで、自分で勉強する時間もとれない状況でした。

さすがに我慢できなくなって、事業主に「辞めたい」と告げたところ、夜遅くに事業主から電話で「明日から店舗への出入り禁止」を言い渡されました。

雇用していないので「解雇」ではなく、研修生だから「出入り禁止」なのですが、店舗には私物もありますから困ってしまいました。

私物は回収しなければなりません。かと言って「事業主と顔を合わせるのも怖い。何言われるかわかったものではない」ので、Aさんは事業主や従業員が店舗にいない時間を見計らって、私物を回収しました。

しかし、従業員と顔を合わせてしまいました。

従業員に「いつもの時間にこなかったけど、どうしたの?」と尋ねられ、「出入り禁止となったので私物を取りに来た」と説明して帰ってきたのですが・・・・

後日、その事業主は「店舗から物がなくなっている」と警察に被害届を提出し、「Aさんが怪しい」とまで告げているのです。

Aさんは県労連が紹介した弁護士のアドバイスを受け、何とか警察での事情聴取への対応をすませ、親から航空運賃を送ってもらって、親元に帰ることができました。

台風の夜に寮を追い出されたケース

これもダイビング業でのケースです。

Bさんは、ある離島で研修手当7万円、住まいは業者の寮に無料で住んでいました。

何もなければ、先に紹介したAさんよりは生活は幾分楽にはなりますが、「寮に住んでいる」ということが、案外と厄介な事になるのです。

沖縄地方に台風が接近し、風雨が激しくなってきた晩のこと、電話がかかってきました。

「社長に辞めたいと言ったら、社長は激怒し、『お前は必要ない。ただちに寮から出ていけ』と言われ、『外は台風で雨も降っているし、風も強い。せめて台風が過ぎるまで待って欲しい』と頼んだが聞いてもらえず、困っている」とのことでした。

たまたま、その島には県労連の組合員がいましたので、すぐに連絡をとり「台風が吹き荒れている最中、こんな時間に寮を追い出すなんて人権問題だ」と抗議し、台風が通過するまで寮にいることを認めさせました。

住み込みで働いてきたが、夜中の3時に追い出される

宿泊業を営む事業主の下で、住み込みで働いていたCさんは、11月初旬、経営者に12月一杯で辞めさせてほしいと申し出ました。

これも、ある離島のことで、Cさんとしては、後任を採用するには早めに伝えておいた方が良いだろうと考えて、約2か月前に伝えたのでした。

そうすると、この経営者「辞めるなら明日でやめてくれ、退職届を出せ」と迫ってきました。

Cさんは「自分の意志で辞めるのは12月末で、明日ではないからそれは出せない」と頑張り、話し合いは延々と夜中の3時まで続きましたが、議論は平行線となりました。

結局、経営者は「お前はうちの従業員ではない。もともと雇用していないので、直ちに出ていけ」とCさんに迫りました。

Cさんは、働いて給料をもらってきたのに、もともと雇用していないと言われることに対して、到底納得できないのですが、このまま抵抗し続けると暴力を振るわれそうな危険を感じ、やむ無く宿泊業者の元を引き払い、遅い時間でしたが他のホテルを何とか探して寝ることができました。

県労連にメールで相談があったのは、土曜日の夜で、たまたま日曜日に出勤してメールに気づき、Cさんに電話したのですが、そのときは、「このまま島にいてもお金が減っていくだけなので、航空運賃を払うお金があるうちに、近畿地方の出身地に帰ることにした。すでにチケットも手配した」とのことでした。

沖縄に来る前に条件をしっかり確認し、証拠は残しておきましょう

上にあげた三つのケースとも、それまでは使用主とはギクシャクするような関係ではなかったのに、退職を切り出した途端に理不尽な対応をされています。

これらに共通するのは、ネットでの募集公告を見て応募しているので、自分の労働条件に関する証拠を何も持っていないことです。

労働者を消耗品扱いする事業主ですから、労働条件を明示する書類は一切ありません。

そこで、沖縄で働いてみたいと考えている若者へのアドバイスです。

ネットの広告は、画像やPDFにして保存しておきましょう。

沖縄に来る前に、事業者と連絡をとって十分説明を聞きましょう。

電話内容も録音しておくことをお勧めします。

事前に契約書を送って貰いましょう。

送ってくれない事業者はお断りしましょう。

そんな業者はいずれトラブルを引き起こす可能性が高いと考えましょう。

沖縄の観光産業は人手不足です。

呼び込む時には甘いことを言って、実際に行ってみると「約束が違う」ということにもなりかねません。

それでもトラブルが起きたときは、ネットで「沖縄県労連」を検索し、メールなり電話なりお寄せ下さい。

研修生であっても、「安価な労働力」として事業に組み込まれている場合は、賃金を払えて請求できる可能性があります。

沖縄の事業主が、すべて悪徳業者ではありませんし、上記の事例で紹介したような酷い業者は“特別な例外”と信じたいのですが、用心の上にも用心するにこしたことはありません。

折角沖縄で働くのですから、安心して働いていただきたいとの願いをこめて、このメッセージを送ります