沖縄県最低生計費試算調査の結果について

―新型コロナによる経済不況を抜け出すには、最低賃金を全国一律で1,500円以上に―
           2020年7月27日 沖縄県労働組合総連合
○現在の沖縄県の最低賃金は全国でも最も低い790円である。この金額では、フルタイムで働いたとしても月額14万円に届かない。ここから税金などを差し引くと、可処分所得は10万円ほどであり、ワーキング・プア状態である。
○今回、沖縄県労働組合総連合(沖縄県労連)では、沖縄県で労働者がふつうに暮らすために必要な費用を科学的データにもとづいて明らかにした。
○具体的には、主に沖縄県労連に加盟する各単産の労働者を対象に、生活のパターンを調べる「生活実態調査」及び持ち物をどれくらい所有しているのかを調べる「持ち物財調査」を実施し、その結果をもとに生活に必要な費用を一つひとつ丁寧に積み上げる「マーケット・バスケット方式」により、ふつうに暮らすために必要な費用を算定した。
〇調査には、962名が回答をしている(回収率約24%)。今回は、その中から沖縄ではたらく10~30代で一人暮らしの若者84名分のデータの分析結果を報告するものである。
○那覇市内で若者がふつうに一人暮らしをするためには、男性=月額246,316円、女性=月額249,272円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約300万円となる。ちなみに、昨年東京都(北区)でも同様の調査結果が公表されたが、男性=月額249,642円、女性=月額246,362円であった(ともに税・社会保険料込み)。
○この生計費で想定した「ふつうの暮らし」の内容は、以下のようなものである。
・那覇市長田の25㎡の1Kのワンルームマンション・アパートに住み、家賃は35,000円(2階、エアコン付き)。中古の軽自動車(50万円)を所有し、通勤や買い物、レジャーに使用している。自動車関連費は月額約25,000円。
・冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機などは、量販店で最低価格帯のものでそろえた。
・1か月の食費は、男性=約41,000円、女性=約33,000円。朝晩は家でしっかりと食べ、昼食については男性はコンビニなどでお弁当を買い(1食あたり500円)、女性は週に3日は弁当を持参するスタイルにした。そのほか、月に2~3回、同僚や友人と飲み会やランチに行っている(1回当たりの費用は飲み会=3,500円、ランチ=1,500円)。
・休日は家で休養していることが多い。1泊以上の旅行は年に1回で、その費用は7万円。月に4回は、恋人や友人たちと郊外のショッピングモールに行って、映画・ショッピングを楽しんでいる(1回2,000円で月に8,000円)。
○試算の月額を、賃金収入で得ようとすると、時給換算で男性=1,417円、女性=1,434円(中央最低賃金審議会で用いる労働時間=月173.8時間で除した場合)になるが、これはお盆もお正月もGWもない、非現実的な働き方である。ワーク・ライフ・バランスに配慮した労働時間で換算(月150労働時間)してみると、男性で1,642円、女性で1,662円となる。これまでに調査を行った20都道府県の結果と大きな差はない。つまり、最低賃金は全国一律で1,500円以上に引き上げなければならないという結論である。
〇緊急事態宣言が発令されても休業しないで社会を支えたエッセンシャルワーカーは、最低賃金近傍で働く割合が高い。彼ら彼女らの仕事に報いるためには、最低賃金はふつうに暮らせる水準まで引き上げなければならない。いま、貧困と密を減らすことが最大のコロナ対策である。最低賃金は凍結ではなく、大幅に引き上げる局面である。